「藤井聡太七冠」再びの“タイトル独占”なるか 【2025年の将棋界展望】立ちはだかるのは“大器”“努力の鬼”“22歳の序列2位”
藤井、叡王戦でリターンマッチなるか?
現在の将棋界の序列は、1位が藤井七冠。2位が伊藤叡王だ。両者ともに歳はまだ22歳と若いが、格としては東西の両横綱ということになる。 両者のこれまでの対戦成績は藤井12勝、伊藤3勝、持将棋(引分)1局。前期叡王戦以来、両者の公式戦での対局はない。 12月15日におこなわれた「SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦2024」(準公式戦)の決勝戦には、藤井は西軍、伊藤は東軍のメンバーとして出場。そこで両者は対戦し、伊藤が勝っている。 叡王戦は段位別予選が終わった。伊藤へのリターンマッチが期待される藤井は、今期はシードで本戦トーナメント(ベスト16)からの出場。そして1月8日、本戦1回戦で、八段戦を勝ち上がってきた増田と対戦する。棋王戦五番勝負だけでなく、こちらでも同じ注目カードが実現した形だ。 勝率8割以上を誇る藤井といえども、4連勝して挑戦権を獲得するのは、そう簡単なことではない。将棋は先手番がわずかに有利なゲームで、公式戦の勝率はおおむね52パーセント前後で推移している。トップクラス同士の対局ともなれば、さらに先手のアドバンテージが大きくはたらく傾向にある。タイトル戦の七番勝負や五番勝負であれば、先手と後手は交互に変わる。しかしトーナメントの一番勝負では先手か後手かは振り駒によってそのつど決められ、後手番が続くこともある。「完全情報ゲーム」である将棋は理論上、運が介在しないゲームだが、振り駒だけは運としか言いようがない。 叡王戦五番勝負は近年、4月に開幕している。もし伊藤-藤井の再戦となれば、また大変なフィーバーが起こるだろう。 八冠復帰か、強敵たちの逆襲なるか。2025年も注目の戦いが続く。 松本博文(まつもとひろふみ) 将棋ライター。1973年、山口県生まれ。東大法学部時代、将棋部に所属し、在学中より将棋書籍の編集に従事。卒業後はフリーの将棋ライターに。日本将棋連盟などのネット中継にも携わる。著書に『ルポ 電王戦』『棋承転結』(いずれも将棋ペンクラブ大賞文芸部門受賞)、『藤井聡太 天才はいかにして生まれたか』など。 デイリー新潮編集部
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