「藤井聡太七冠」再びの“タイトル独占”なるか 【2025年の将棋界展望】立ちはだかるのは“大器”“努力の鬼”“22歳の序列2位”
棋王戦は増田康宏八段が挑戦
2月から開幕する棋王戦五番勝負では、藤井は増田康宏八段(27歳)の挑戦を受ける。 増田は幼少期から大器の呼び声が高かった。師匠である名棋士・森下卓九段(58歳)は、早くから増田の才能を激賞してやまなかった。 増田は2014年、16歳のときに四段に昇段。2016年に藤井が史上最年少14歳2か月で四段になるまでは、現役最年少棋士だった。今年2024年には順位戦でA級に昇級。名実ともにトップクラスの仲間入りを果たしている。そして棋士生活10年にして、満を持して、タイトル戦初登場も決めている。 藤井棋王への挑戦を決めたあと、増田は次のように語っていた。 「(相手のスキは)ないんですけど(苦笑)。ただ、持ち時間なくなってくると、ちょっと動揺される部分があるのかなと思うので。藤井棋王がなるべく苦しむような展開に持っていければいいなと」 「五番勝負は厳しいものにはなると思うんですけど、自分の力をしっかり出して臨みたいと思うので。タイトル戦も応援よろしくお願いいたします」 藤井と増田の対戦成績は、藤井5勝、増田1勝で藤井が勝ち越している。しかし藤井に対して11連敗していた伊藤が、叡王戦五番勝負を制した例もあるように、増田も流れに乗れれば、十分にチャンスはあるだろう。 棋王戦では、増田の師匠・森下は1994年度と96年度の2回、羽生善治棋王(現九段、54歳)に挑戦している。しかし羽生の堅塁を抜くことはできなかった。森下は羽生、増田は藤井と、同時代の絶対王者に挑む点で似ている。師匠の森下が実現できなかったタイトル獲得の夢を、弟子の増田がかなえることはできるだろうか。
名人挑戦権争いは混戦
名人戦七番勝負は例年、4月に開幕する。 藤井名人への名人挑戦権を争うA級順位戦は佐藤天彦九段(36歳)がトップを走っていた。ずっと居飛車党だった佐藤は近年、振り飛車を多く用いて好成績を残している。しかし佐藤は4連勝から2連敗。同成績で永瀬、佐々木勇気八段(30歳)、増田が同星で並び、大混戦の様相を呈してきた。次いで渡辺明九段(40歳)ら3勝3敗勢が続く。 渡辺はかねて状態がよくなかった左膝の手術のため、1か月ほど競技生活を休むことになった。12月13日におこなわれたA級順位戦6回戦で千田翔太八段(30歳)と対戦中、膝の痛みがひどくなり、形勢互角の中盤戦で投了を余儀なくされた。渡辺は先日、膝の手術を受け、現在はリハビリに取り組んでいるという。渡辺の一刻も早い回復を祈りたい。渡辺は25年の棋士人生の中で、何度か逆境に追い込まれながら、復活を成し遂げてきた。対局に復帰すればまた、藤井の前に立ちはだかる強敵の一人となるだろう。 名人位を通算5期保持すると、永世名人の資格が与えられる。江戸時代から数えて、19人目の永世名人資格者は羽生。その次の20世名人はまだ決まっていない。藤井は現在2期獲得。現在のA級では渡辺や佐藤が名人3期の実績を持つ。両者のいずれかが名人戦に名乗りをあげると、20世名人を争うという意味でも盛り上がりそうだ。