WS最終決戦先発ダルビッシュの難敵は滑るボール。どう克服するのか?
どこに問題があったのかと考えていて、ようやく合点がいったのは、スポーツ・イラストレッド誌の記者にボールの違いを指摘されたときだという。 「レポーターの人に写真の違いを見せてもらって、それで違いに初めて気づいた」 その後、通常のボールとワールドシリーズ用のボールを比較すると「全然違った」そうだ。 結局、「違うはずはない」という先入観が彼の感覚を狂わせたのだろうか。 ダルビッシュは、「あの日の体調だったのか、ボールがツルツルしているからボールが抜けたのか、わからない」とは断りつつ、「自分の体調がどうっていうよりも、あのスライダーは、どっちかといえばボールが・・・」と、原因を仄めした。 ヒューストンでは、それに乾燥が加わって、ますますボールが滑った可能性もある。スライダーだけではなく、カットの曲がり幅も小さくなっていた。 29日ーー第5戦の試合前、ダルビッシュはゲームボールを手にブルペンに入った。 「前回はワールドシリーズのボールで投げました」 袋からボールをいくつか取り出し、ハニカット投手コーチと、なにやら言葉をかわす。それがボールについてということは端からも分かったが、その日は通常よりも多い37球をブルペンで投げている。終盤、納得がいかなかいのか、天を仰ぐような仕草も見せた。 本来、繊細さはダルビッシュの強みでもある。しかし、一度、修正を試み始めると、妥協を知らない。 3勝3敗で迎える最終決戦の第7戦に修正は間に合うのか。 ブルペンでは、「全体のバランスを見直しました」とダルビッシュ。具体的には語らなかったが、ボールに合わせてバランスを微調整した、ということか。 救いは天候。31日、ロサンゼルスには珍しく雨が振った。明日の予報も日中は曇りがちで湿気がある。 ただもう、ここまで来て、ボールが滑る、滑らないを言っても始まらない。明日は勝った方が世界一となる勝負の一戦。逆境を超えていけるかどうかは、ダルビッシュのその後の価値をも左右するかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)