《介護がうまくいくコツ》認知症患者に対して「今日は何月何日?」「孫の名前は?」と聞いてはいけない理由
不安から起こる症状には安心してもらうことで対策
介護の現場では、認知症患者が不要なものまでパンパンに荷物を詰めて出かけようとしたり、溜め込んだものを捨てられない収集癖で困ったりすることもしばしばあるという。 ◆余計な荷物も取り上げない あれもこれも、と服を余分にもったり、リモコンやドライヤーなど外出に不要なものまで持ち出そうとしたりするのは、認知症の人が不安から「肌身離さず持っておかなければ」と考えてしまうことが理由だと川畑さんは言う。 そんなとき、「必要ない」と取り上げてしまうのはNG。「大切なものだから、私が預かっておくね」と、本人が納得した上で渡してもらうことが安心につながる。 「あとは、こっそり家に戻しておけば大丈夫。認知症の人は、それが『今』持っていかなければならない大切なものだと考えていますが、しばらくすると忘れてしまうこともよくあります」 ◆収集癖はなるべく見守る 川畑さんによると、収集癖も不安によってあらわれることがある症状の1つで、割り箸や使い捨てスプーン、ティッシュなど、誰かの役に立つと感じるものが集められる傾向にあるという。 「奇怪な行動に見えても、本人には集める理由があります。とがめるよりも、『たくさん集めたね』『これだけあれば安心だね』と受け入れて、そのあとに『なぜ集めているの?』と理由を聞いてみてください」 ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどを大量にため込んでいた認知症患者から川畑さんは、オイルショックで紙不足を経験した話や息子が風邪をひきやすく、大量にティッシュを集めた話を聞いたことを教えてくれた。 私たちもつい、使わなかった割り箸やおしぼりを保存してため込んでしまうことがあるだろう。「たくさんあれば安心」「念の為」といった思いが認知症によって加速してしまうことがあるという。しかし、コツコツ、必死に集めたものに対して、叱責したり、勝手に捨てたりするのは逆効果だ。 「意固地になってさらに集めたり、『物盗られ妄想』が起こったり、不安や不満の悪化につながりかねません。危険だったり、不衛生だったりするものでなければ、しばらく見守ってあげるのが、お互いに“晴れ”をつくる原則です」