新型BMW X6は“カツカレー”である。旨みが増した進化とは?
芯の部分はしっかり
乗り心地とハンドリングは、いかにもBMWらしいもの。 引き締まった足まわりは路面の凹凸からのショックを割と正直に伝えるけれど、このクルマを選ぶようなドライバーなら気にならないというか、むしろダイレクトなフィーリングを好ましく感じるはずだ。そして速度域が高くなるほどにフラット感が増し、まさに矢のごとく走る。このクルマの高速クルーズのフィーリングは、「滑走」という言葉で表現したい。 コーナーでは、ハンドル操作に正確に反応する点が心に残る。そのぶん、ハンドル操作が遅れたりハンドルを切るタイミングが早すぎたりすると正直に挙動が乱れるから、「あぁ、オレって下手っぴ……」と、落ち込むことになる。 でも、それも含めてこのクルマを操る楽しさだ。クルマに乗せられているのではなく、うまく走ろうが下手に走ろうが、あくまで責任はドライバーにある。 ひとつだけ気になったのが、舗装の荒れた路面での乗り心地がちょっととんがりすぎているのではないか、ということ。キャッキャ運転しているドライバーはいいかもしれないけれど、同乗者にはちょっとキツいと思う。 オプション表を見ると、試乗車はオプションの21インチタイヤを装着している。これが標準の20インチだったらどうなるか、興味のあるところだ。ただしこの一点を除けば、気配りのきく優等生だった。 BMW X6はもはや、とんがった孤高のクルマではなくなっている。けれども、個性的なスタイルを持ついいクルマ、という芯の部分はしっかりとしていた。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)