地価上昇で「家賃値上げします」無慈悲な通知に住民悲鳴 応じないとダメ?
●長く住むつもりなら「値上げに応じるのもアリ」!?
──賃料増額請求を受けたら、その後はその額を支払うしかないのでしょうか。 賃料増減額請求は、一方的な意思表示で適正賃料額への変更の効力が発生する形成権ですが、当事者間に争いがある場合、いくらが適正賃料額かは調停や裁判で決まります。 当事者間で協議が整わない場合、増額請求を受けても増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことで足り、増額請求を受けてもこれまでの賃料額を支払えば問題ありません。 ただ、後々調停や裁判の場で賃料増額が認められた場合、効果は増額請求を受けた時点に遡り、不足額に年一割の割合による利息を付して支払う必要が出てくる点は意識しておく必要があります。 ──借りている側として留意しておくべき点はありますか。 月額賃料が数万円や十数万円の居住物件で賃料増額が争われ裁判所まで持ち込まれる事案は正直多くはないという印象ですが、ここ数年の経済状況をみると、都心を中心に、冒頭で述べた賃料の増額を認める条件が整いやすい状況となっています。今後は裁判所に持ち込まれるケースも増えるのではないかと思われます。 また、賃料が不相当かどうかは、基本的に直近の賃料変動時点と増減額請求があった時点とを比較して判断されます。 そのため、長く住むことを考えているなら、オーナーから賃料増額の要望を受けた場合、少しの値上げで済むのであれば応じることを検討してもよいでしょう。増額により賃料を変動させたという実績を残すことで、近い将来に大幅な値上げを求められるリスクの回避にもなりえます。 【取材協力弁護士】 古賀 麻里子(こが・まりこ)弁護士 東京弁護士会所属。借地借家トラブル(事業者の立ち退き問題、土地建物の明渡問題、テナント賃料の増減額請求、サブリース解約交渉等の不動産問題)、各種損害賠償問題を多く扱う。 事務所名:古賀法律事務所 事務所URL:https://kogalaw.net