石神井公園駅前の再開発、地裁が認めた「執行停止」を一転、高裁が却下…なぜ? 住民に“回復不可能な損害”を与えかねない「深刻な問題」
原告の損害は金銭によってもカバーされないおそれも…
福田弁護士はさらに、本件で執行停止を認めないと、再開発組合の設立認可の取消判決が出た場合の原状回復が困難になることを挙げる。 「取消判決が出た場合に、原告が土地の返還を受け、建物を再築してもらうことは物理的には不可能ではない。しかし、誰がその費用を払うのかという問題がある。 法的には再開発組合が原状回復の義務を負うことになるが、再開発組合の設立認可が取り消されれば、存立の基礎を失ってしまう」(福田弁護士) それに加え、再開発組合の財政状況からみても問題があるという。 「再開発組合は債務超過状態にある。再開発のスキームは、再開発組合がデベロッパーから借り入れをし、再開発ビルができたあとに権利床を取得し、販売することで、最終的に利益を得るというもの。 取消判決が出て再開発がとん挫した場合、現実的にみて、再開発組合は原告地権者に補償する資力がないと想定される。純粋に経済的な観点からみても、原告の損害は回復不可能になるのではないか」(福田弁護士) 原告側は東京高裁による執行停止の却下決定を不服として、5月13日に最高裁に特別抗告と許可抗告の申し立てを行っている。また、本案である「再開発組合の設立認可処分の是非」についての判決は7月29日に予定されている。 最高裁は執行停止の是非について、どのような理由の下にいずれの判断を行うのか。本案に関する判決の内容とともに、注目される。
弁護士JP編集部