多くの上司は知らない…部下が次々と辞めるのは「上司の姿に絶望」したからという「残酷な現実」
「上司の働く姿に絶望した」という離職原因
部下は上司の姿に数年後の自分を見ます。その上司が楽しそうに活き活きと働いていたら、「自分も数年後、あんなふうになれるんだな」と未来に希望を持ち、この会社で長く働こうとします。 しかし、上司が深夜残業、休日出勤の連続で、つらそうに仕事をしていたら、「自分も数年経ったら、あんなふうになるんだな」と未来に絶望します。現状には満足していても未来に絶望すると、人はリスクを回避するためにその場から離れようとするのです。 IT企業で働いていたE氏(28歳)は、昇進の話を持ち出されたタイミングで会社を辞めて転職しました。その理由をこう話されました。 「前職の会社は給料も良かったし、仕事も面白かったです。上司も面倒見の良い人が多くて、皆さんとてもいい人たちでした。ただ、その上司の人たちは年次が上がるほど平日は深夜まで働いてて、土日祝日も出勤してるんですよ。 『昨日も家で2時までやってたわ』『結局、日曜日も出てたよ。マジきついわ~』。そんなことを冗談っぽく話されているんですが、『マジっすか? それはきついっすね~』って返しながらも正直引いてました。 あの上司たちの姿を見ていて、『自分も昇進したらこうなるのか。昇進する前に辞めないとヤバいな』と思って辞めました」 コンサルティング企業で働いていたH氏(27歳)は、憧れの会社に就職できたものの、入社4年で辞めました。その理由をこう話されます。 「もともと憧れの会社だったので、入社できた時は本当に嬉しかったですね。やりたい仕事もやれてたし、給料も良かったです。上司は丁寧に指導してくれましたよ。でも、その上司がとてもつらそうに仕事をしてたんです。 それからよく仕事の愚痴とか会社の悪口を言ってました。『こんな仕事のふり方はあり得ない』とか、『会社は金儲けのことしか考えてない』とか、『前から社長のことが嫌いなんだ』とか。 そういう話を聞くほど、会社が信用できなくなりました。自分も昇進したら、こんなふうに愚痴や悪口を言うようになるのかなと思うと、この会社に長くいちゃいけないなと思ったんです」 こういった「上司の働く姿に絶望した」という離職原因が意外に多いと感じています。と同時に、この点は多くの会社で盲点となっており、これによる離職を防げていない会社もまた多いと感じています。 皆さんは、ご自身の上司の働く姿に自分の未来を見ることはないでしょうか。そして、もし上司がかなりつらそうに働いていたら、このままこの会社にいてはいけないと未来を危惧し、離職を考えたりはしないでしょうか。 * * * この「上司の働く姿」に起因する離職を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。その点については、後編記事〈36歳管理職が青ざめた…部下の前で「忙しいアピール」をした結果起きた「まさかの事態」〉で詳しくお伝えします。
藤田 耕司(経営心理士、公認会計士、税理士)