【坂口正大元調教師のG1解説】位置取り+瞬発力の勝利 高まっていく友道厩舎の「厩舎力」
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <朝日杯FS>◇15日=京都◇G1◇2歳牡牝◇芝1600メートル◇出走16頭 典型的なスローの前残りでした。前半の半マイルは48秒0。2歳G1でもあまり見ない通過ラップです。スタートで立ち遅れ、序盤は後方2番手だったミュージアムマイルが、3コーナーの坂を下る前に難なく好位までポジションを上げられたほど遅い流れでした。 アドマイヤズームはスタートを決めると、スッと2番手に落ち着きました。掛かることなく、いいリズムで追走し、直線では馬場のいい部分を余裕を持って選択できました。上がりは最速の33秒6。これだけの瞬発力を持った馬が、遅い流れの2番手で折り合えば、他馬は太刀打ちできません。位置取り+瞬発力の勝利でした。 友道厩舎は21年のドウデュース以来となる朝日杯FS制覇です。そのドウデュースは22日の有馬記念が引退レース。アドマイヤズームが厩舎の看板を引き継ぐかのような勝利を挙げました。「厩舎力」というのは原石を仕入れることと、それを磨いて宝石にすることだと思います。毎年のようにG1を勝つ友道厩舎は、いい循環の中でますます「厩舎力」が高まっています。有馬記念も楽しみです。 アドマイヤズームの父モーリスは、13年10月の京都新馬戦(芝内回り1400メートル)を1分20秒6の好時計で勝った時に、なんと走る馬だと思ったことを鮮明に覚えています。この朝日杯FSには産駒3頭が出走しましたし、現2歳世代は当たり年かもしれません。 その1頭、1番人気のアルテヴェローチェは5着でした。中団後方から馬群を縫ってよく伸びました。33秒台の脚も使える馬だと思いますが、進路を探しながらの分だけ全開とはいきませんでした。展開に泣きましたが、能力は確かです。 2着ミュージアムマイルは立ち遅れを早いうちに挽回したC・デムーロ騎手の好判断が光りました。クラシックの距離の方が向きそうですし、来春が楽しみです。3着ランスオブカオスはルーキー吉村騎手が中団からよく差してきました。馬はキャリア1戦でしたし、人馬とも今後が楽しみです。(JRA元調教師)