授業時間は韓国の「10分の1」中学生の情報教育 教員不足も深刻なぜ? #みんなのギモン
コンピューターの活用法を学ぶ、AIのことを知る・・・こうした情報教育は小学校から始まっています。ところが今、全国の公立中学校では、情報分野を教える「技術科」の教員が不足し、国語や家庭科など専門外の教員が穴埋めで教えているケースが多いことがわかりました。その上、中学校の情報学習の時間は韓国の10分の1。デジタル活用が不可欠な時代に教育現場の実態が乏しいのは、なぜでしょうか?(報道局 調査報道班 小野高弘)
■「正解がわからない・・・」
記者が訪ねたのは神奈川県内の市立中学校の技術科の授業。3年生の生徒の前に1人1台ずつパソコンが置かれています。教えているのは20代の女性教諭です。 この日のテーマは「双方向性のあるコンテンツとは何だろう」。 女性教諭が問いかけます。 「家の中にある双方向のものといえば?」「そう!Siriとかアレクサとかあるよね」 「では、ある場所に行くのに紙の地図で調べるか、地図アプリに聞いて答えてもらうか、メリットとデメリットを考えてみましょう」 次々と挙手した生徒らは 「ネットだと電波が届かない場所では使えない!」 「紙だと地図が最新かどうかわからないと思います」 「ネットはどのぐらい時間がかかるか教えてくれる」 生徒らの関心を引き出しながらテキパキと授業を進める教諭。でもじつは家庭科の教員です。この学校に技術科の教員がいないため、この女性教諭と理科の男性教諭が「免許を持たない教科担任」として手分けをして技術科を受け持っているのです。 女性教諭は今年度、本来の家庭科の授業が週10コマあり、それに加えて技術科の授業を週6コマ担当しています。 画面上のネズミが迷路を脱出するプログラミングを教えたり、LINEのようにチャットできるアプリを生徒自身が作る授業も予定したりしていますが、免許を持たない専門外のことを教えるって・・・大変なのでは? 女性教諭 「SNSぐらいはやりますが、プログラミングなんてやったこともなかったですから。家庭科は自信がありますが、技術科だと知識量がないのでヒントを出してアイデアを導く引き出しもなく、教え方の正解がわからずやっています」 「生徒はこちらが予期せぬ失敗をするんです。先生、これどうしたらいいんですかって聞かれるんですが原因や解決法が示せず、なぜだろうね~って一緒に考え込んでしまうこともあります。授業が深まらないですよ」 女性教諭は「わらをもすがる思い」で技術科教員の研修会を自分で見つけて参加したり、技術科の元教諭だった教頭に相談して教材のデータを譲り受けたりしながら授業を考える大忙しの毎日です。 じつはこのような光景は全国の中学校で見られるといいます。技術科の免許を持つ教員が全国的に不足し、免許外の教員による掛け持ちで埋め合わせているのです。