授業時間は韓国の「10分の1」中学生の情報教育 教員不足も深刻なぜ? #みんなのギモン
■授業時間は韓国の「10分の1」
心配なのは教員不足だけではありません。技術科の授業時間数も近年減ってきました。 今、中学3年間の授業時間数は外国語が420時限、国語や数学が385時限に対して技術科は87時限ほど。中でもコンピューターに関する「情報」の内容では、技術科教員らの調査によると実態として3年間でわずか20時限ほどになっています。 これを外国の中学3年間の「情報」の内容の授業時間数と比べると、韓国は200時限以上、中国は100時限以上、アメリカ・カリフォルニア州では月に10時限以上のところもあります。日本は韓国の10分の1・・・授業の少なさは際立っています。 内容でも差があります。日本の中学生はコンピューターの仕組みや計測や制御のプログラミング、情報リテラシーを学びますが、中国や韓国、アメリカの中学レベルではAIの学習、タッチパネルを利用したシステムの開発、データを収集して分析処理をする演習、ロボット開発やドローン製作など、より高度で実践的な授業が行われています。
■中学生が「開発」も
こうした中、情報学習を社会の問題解決に役立てる授業を行っている精力的な学校もあります。 熊本市の中学校の授業では生徒たちが、地震で家が揺れたら点灯して避難経路を示してくれるシステムや、避難中の熱中症のリスクを減らすため、一定の温度に達したら警告アナウンスが流れてファンが回り出す高齢者用のベストを開発しました。 岩手県盛岡市の中学校では、生徒たちが視覚障害者のための白杖(はくじょう)のデジタル化に取り組みました。白杖の先にセンサーをつけ、障害物に近づくと白杖が振動して知らせます。さらに接近すると振動が強くなり、転倒するとセンサーが反応して音が鳴り助けを求められるようにしました。 生徒たちは「どんな状況でどんなシステムが必要になるか」を考えて装置を作り、それを動かすプログラミングを行っていくのです。装置が動かなかったり、動くタイミングが合わなかったりと試行錯誤しながら完成させます。 元中学校教員で技術科教育を専門とする国立教育政策研究所の渡邊茂一教育課程調査官は、技術科の現状についてこう話します。 「中学校技術科は、テクノロジーで社会の問題解決に貢献する資質を育てる教科です。しかし、デジタライゼーション等により産業や社会の構造が変わっていく中で世間における技術科は、のこぎりびきや釘の打ち方等の作業の仕方を学ぶという、昔の授業イメージのまま取り残されていると感じています。全国的に技術科教員が不足しているのは確かで、そのため今年4月から大学の教員養成の負担軽減を行ったり、指導資料の公開やオンライン研修による支援体制を強化したりしていますが、これらはまだ始まったばかりです」 そして今後については。 「各地では、地元の課題を解決するためのプログラムを考えたり、最新のテクノロジーを取り入れた実践的な授業を行うなど、未来を切り拓く力を育て、魅力ある授業を展開する先生方がたくさんいらっしゃいます。こうした先進的な取り組みをもっと広く共有したいと考えています。多くの人に技術科の目標や授業の内容を知っていただき、授業に取り組む先生方に温かいご支援をお願いしたいです」
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