レ軍上原の奮闘を支える41歳の工夫
カット、スライダーと選別せず、横の動きを加えたい時の武器。上原と言えばキレの良い直球に、家伝の宝刀スプリットと縦の変化を意識している打者にとっては、横の動きが加わることで、3次元の対応を迫られることになり、ますます打ちづらい投手になる。 “カット系”の向上に取り組んだキャンプ中には、興味深いことがあった。3月16日のオープン戦(対ツインズ)。上原はこの試合で「直球と“カット系”だけでいかに組み立て勝負するか」という課題を掲げた。監督コーチに趣旨を伝え、捕手にも「きょうは、スプリットを封印する」と伝えていた。結果は1本塁打を含む4被安打4失点。「スプリットで落とせば、楽に打ち取れたんじゃ?」と報道陣に問われると「そりゃ、もちろん。でも、きょうは投げないって決めていたので」と、結果を気にすることはなかった。 メジャーでこういう調整は珍しいようで、米メディアからは「スプリットで十分抑えているのに、なぜカットボールを練習しているのか」と疑問の声もあがった。だがベテランは、「今の時期しかできないこともある。それに取り組むのが、キャンプ」。 どの程度、通用するか。もしくはしないのか。その判断に大事な調整時期。右翼が極端に狭い本拠地フェンウェイパークでは左打者の内角に食い込んでくる“カット系”は、諸刃の剣にもなるだけに、慎重に見極め作業を行っていたというわけだ。 「18年もやっていれば、そこはわかっています。キャンプではやりたいことができた。カット系は、もっともっと精度を上げていかないといけない」 41歳のベテラン右腕から向上心が消えることはない。