《トランプ圧勝の大統領選からアメリカがみえる!》「なぜ火曜日に投票?」「どうして選挙人という存在が生まれた?」から「ハリスに待ち受ける屈辱」までジャーナリストが解説
まだ今回の選挙は終わっていない?
この、11月の投票で選ばれた選挙人たちは、12月に「選挙人団投票」というものを各州で行い、実はシステム的には、ここで正式に「アメリカの大統領」は選び出される。ところで法令上、この選挙人たちが、この段階で造反することを制止するシステムはない。例えば共和党系の選挙人がこのとき突然翻意し、「やはりカマラ・ハリスが大統領にふさわしい」などと言いだしても、それはそれで通ってしまうのである。ただし現実的には、そういう行動で選挙結果がひっくり返ったような事例は過去にない。 前述したように、アメリカ合衆国の建国は1776年のことである。当時の白人文明圏のなかで非常に珍しい、王様が存在しない共和政国家だった。だから大統領というリーダーを国内で選出する必要があったのだが、当時の世の中には、現代のような電気通信システムや自動車、またマスメディアなどは存在しなかった。アメリカの各地で選挙を行って、投票結果を集計し、その情報を遅滞なく公表するなどといったことは、そもそも無理だった。また当時は必ずしも、「成人した市民には誰にでも選挙権を与えよう」といった考えが、世に広く受け入れられていたわけでもない。だからこうした州ごとの代表者(選挙人)を選んで、彼らに大統領を決めてもらう間接選挙の方式が採用されたのである。 実は当初は、土地ごとの有力者などを最初から選挙人に割り当てていたような州もあり、そういう州では一般の民意とは特に関係なく、選挙人が動いていたパターンもあった。しかし、それも徐々に「ちゃんと選挙で決めよう」という流れになっていき、「大統領選挙」というものがおおむね、全米でしっかりした形で行われるようになったのが、19世紀前半ごろだったのである。そう考えると、「自由と民主主義の国、アメリカ」というよくあるイメージとは、少し違和感もあるかもしれない。 ところで、この選挙人団投票を取り仕切り、次期大統領当選者を認証する役割を負っているのが、現職副大統領なのである(2025年1月6日予定)。すなわち、今回その任をこなすのは、ほかでもないカマラ・ハリスなのだ。彼女は果たして、自らを破ったトランプについて、そうした実務を遅滞なく執り行えるのか…そういう視点からも、まだまだこの4年に1度の戦いには注目すべき点は多い。 ※『ビックコミックオリジナル』(小社刊)12月5日号より一部改稿 ◆小川寛大(おがわ・かんだい)/ジャーナリスト。1979年熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2015年、季刊誌『宗教問題』編集長に。2011年より〈全日本南北戦争フォーラム〉事務局長も務め、「人類史上最も偉い人はリンカーン!」が持論。著書に『池田大作と創価学会』(文藝春秋)、『南北戦争』(中央公論新社)、近刊『南北戦争英雄伝 分断のアメリカを戦った男たち』(中公新書ラクレ)など。
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