猪爪花江を演じる森田望智「トラちゃんとのけんかは夫婦げんか」――「虎に翼」インタビュー
――カメラを長回しすることは知らされていなかったんですか。 「アドリブが好きな現場というのもあるんですけど、台本にないトラちゃんと花江ちゃんを見てみたかったんだと思うんです。全部オンエアで使われなかったとしても、これから花江ちゃんを演じる上で、私の中には1、2分間の情景が残っていて。アドリブは、使われるかが大事ではなくて、その役としての思い出を少しでも長く作れる時間だと思っているので、すごく大事な時間でした」 ――あらためて、花江と寅子の関係性をどう捉えていますか? 「花江ちゃんとトラちゃんの関係性は、戻ったり離れたり、どんどん変わるので、『関係性ってこんなにも変化していくんだ』と思ったんです。長い期間を描ける朝ドラだからだと思うんですけど、すごく人間らしいなと。第15週で、花江の言いたいことが爆発してトラちゃんとけんかしてしまうシーンがあるんです。“今まで言えなかったトラちゃんへの不満が爆発する”という流れで、『何で親友なのにトラちゃんに言いたいことが言えないんだろう。花江ちゃんはこんなに我慢する子だっけ?』と思ったのですが、監督から「これは親友のけんかではなく夫婦げんかです」と言われて腑(ふ)に落ちました。だから、その時代の妻として夫を立てたり、家を守って働きに出てくれているトラちゃんを支えなくてはいけないから、自分の気持ちにふたをしていたんです。親友だったら1歩踏みとどまれるところを、気を使わず言ってしまうのも、すごく夫婦げんかっぽいなと思って。けんかを経てまた別の家族の形になっていくんですけど、その変化が朝ドラならではであり、すごく面白いですね」
――第15週は花江が大活躍でしたが、台本を読んだ時の印象を教えていただけますか? 「吉田さんの台本は、いろんな感情を想像させてくれるようになっているんです。第15週ではトラちゃんと花江ちゃんがぶつかりますが、どっちの気持ちも分かるのがすごく魅力的だと思っていて。そこがすごく強く出ているので、視聴者の方にどんなふうに受け取ってもらえるのか気になります」 ――子役の子たちも寅子が帰ってくる前と後で態度を変えたり、お芝居を頑張っていたと思うんですが、役作りに関してお話ししましたか。 「トラちゃんが帰ってくる前と帰った後で、分かりやすく態度を変えようとしているわけではないんです。私もあったのですが、母親の前と父親の前って、多分皆さん違うと思うんですよね。私も、同じような経験があります。みんなお父さんを見るような目でトラちゃんを見ていたと思うんです。もちろん父親の方が心が少し和らぐ方もいらっしゃると思いますし、いろんな面があると思いますが、トラちゃんだからというより、どの家庭にも当てはまることなのではないかなと思っていました」 ――直明役の三山凌輝さんと子どもたちのかわいいところを教えていただけたら…! 「たくさんありましてですね(笑)。とにかく三山さんは子どもにも大人にも、ずっと同じ対応し続けてくれて、エネルギーあふれる方なんです。第15週は、私がお芝居的にとても大変で、結構沈んでいたのですが、ずっと同じようなテンションで現場にいてくれたので、すごく心の支えになりました。子どもたちともすごくよく遊んでくれて、それが直明くんと直人(琉人)、直治(楠楓馬)、優未ちゃん(竹澤咲子)の関係性そのままだなと感じています。台本上では、直人と直治はセリフが多くはないですが、オンエアを見ると分かると思うんですけど、すごくしゃべっているんです。2人ともすごくナチュラルに、自分の延長線のように演じてくれていて、お芝居に入っても入らなくても変わらないので、私はすごく助けられています。みんなに作ってもらった関係性だなと思います」