猪爪花江を演じる森田望智「トラちゃんとのけんかは夫婦げんか」――「虎に翼」インタビュー
NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。物語の主人公・佐田(猪爪)寅子(伊藤沙莉)は、昭和13(1938)年に日本で初めて誕生した女性弁護士の1人として日本中から注目され、憧れの的に。その後、戦争で父・兄・夫を亡くし、家族を支えるために裁判官を目指し、司法省で働き始める。アメリカへの視察、ラジオ出演など順調に仕事をこなす寅子だったが、家庭のことは花江(森田望智)に頼り切りで、家庭を顧みなくなっていたことを指摘されてしまう…。 今回は、女学校時代の親友であり、義理の姉・花江を演じる森田さんにインタビュー! 役作りから伊藤さんとの撮影エピソードまでたくさん伺いました。
――まず、出演が決まった際の心境を教えてください! 「沙莉ちゃんのヒロイン発表があった時に、『絶対に見るぞ』と思っていたんです。沙莉ちゃんとは過去にも共演しているのですが、本当にお芝居がすてきで、さらに物語の題材も面白そうだなと思っていて。『どうにかオーディションに挑戦したいな』と思っていた中、声をかけていただきました。花江ちゃんの役はとても魅力的でうれしかったのですが、同時に責任もすごく感じました」 ――森田さんは花江をどんな人物として捉え、演じていますか? 「よくトラちゃんと対照的な人物と言われるんです。確かにトラちゃんが猪突猛進なのに対して、花江ちゃんは一歩引いて計画的に戦略を練るタイプですが、根本的にはすごく似ていると思っていて。地に足が着いていて、目的のための努力を惜しまず、自分の成し遂げたいことをしていく強い女性という意味では同じだと思うんです。花江ちゃんは、“あざとい”や“したたか”とよく言われるのですが、“したたか”には、あざといという意味と、その反対の面で強くて粘り強くて、力に屈しないという意味があって。その強さが花江ちゃんに備わっているという意味では、すごくトラちゃんと似ていると思います。働く女性たちだけが偉いわけではなく、家を守ることも女性の一つの生き方で、女性たちみんな平等に尊い存在であるということを花江ちゃんが体現していると思いながら大事に演じています」 ――花江とご自身との共通点はありますか? 「花江ちゃんは、一見すごく柔らかそうだけれど、強いし、頑固な部分もあるし、しっかりもので。そういう見た目とのギャップがあるという意味では似ていると思います。私も“柔らかい”と思われることが多いけれど実際は違うんです。また、花江ちゃんは、本質を見抜く力があるのですが、自分のことになるとちょっと見えなくなってしまうところがあり、そういうところは私も似ていると思います」 ――花江は話し方が特徴的でもありますよね。話し方に関して意識していることはありますか? 「最初に台本を読んだ時に、セリフの語尾にハートや音符が付いていて。さらに、衣装合わせの時に、お花があしらわれたピンクのかわいらしいお着物を用意していただいたので、『この衣装が似合わなくてはいけない』というところから逆算して、このしゃべり方になったんです。トラちゃんが結構早くしゃべるので、花江ちゃんはゆったりっていうのも言われていて、そういったいろんなイメージが組み合わさった結果なんです。あと、年齢を重ねていくことも意識していて。ホームビデオで私の母の若かりし頃のビデオを見た時に、すっごく声が高かったんです。声って変わらないようで、変わっているんだと気付いたので、そういう意識も頭の片隅にあります。これからどんどん年齢を重ねて、自分よりも年上の役を演じるので、すごく楽しみです」 ――脚本の吉田恵里香さんが、「花江はもう一人の主人公のつもりで描いている」とおっしゃっていましたが、森田さんはそういう吉田さんの思いを意識していましたか? 「そう言ってくださっているのを後から知ったので、撮影時はあまり意識はしていなかったです。でも、同じ年齢、似た家庭環境で育った花江ちゃんの気持ちを描くことで、トラちゃんの考え方だけでなく、登場人物みんなの気持ちを尊重したくなるような作品にしてくださっていると思うんです。そういう意味で、吉田さんが花江ちゃんをとても大切に描いてくださっていると感じています」 ――伊藤さんとのシーンで特に思い入れのある場面があったら教えてください。 「(猪爪)はる(石田ゆり子)さんの日記を、トラちゃんと花江ちゃんが燃やすシーンがあって。台本上は、トラちゃんが『お母さんが私のお母さんでよかった』と言って、私が肩を抱くところまでだったのですが、その後1、2分ぐらいカメラを長回ししてアドリブでやらせていただいていて、放送でも使われていました。沙莉ちゃんから出た自然な気持ちであったり、半年間撮影を続けている関係性の中で生まれたものだったり、花江ちゃんとトラちゃんを超えて、私と沙莉ちゃんの気持ちが通ったようなシーンでもあってすごく印象に残っています。本当にゆり子さんの演じるはるさんが大好きで、いなくなってしまったことに対して、役としても自分としても思いが乗って、お芝居の面白さを感じたシーンでした」