米ドル/円に潜む「大幅な円高」の可能性…為替のプロが注目する「円安阻止介入」と「米国株安」の動向
今週の注目点…円安阻止介入、米国株安など
今週はCPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)といった米インフレ指標発表が予定されています(下記参照)。米景気が予想以上に強さを見せていることに加えて、中東の地政学リスクを受けた原油価格の上昇などから、インフレへの懸念も再燃の兆しがあり、CPIなどの結果にも注目が集まることになるでしょう。 〈10日〉 3月CPI総合=前回3.2%、予想3.5% 同コア=前回3.8%、予想3.7% 〈11日〉 3月PPI総合=前回1.6% 同コア=前回2.0% このように、インフレへの懸念が再燃する兆しが出てきたことから、米利下げへの期待の後退が広がってきました。それは、米国株などの下落をもたらす主因になってきたようです。NYダウの90日MA(移動平均線)かい離率は一時10%近くまで拡大し、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていました(図表5参照)。 そんな「上がり過ぎ」の反動が、米利下げへの期待の後退をきっかけに広がっていると考えられます。この株安の広がり方次第では、この先、米金利の低下を通じて「米ドル安(円高)」の要因になってくる可能性もあります。 今週は、2週間以上も続いてきた151~152円を中心とした狭いレンジをいよいよ抜けてくるかもしれません。その場合は、長く続いた小動きで溜まったエネルギーの発散により、一方向へ大きく動きだす可能性があります。 ただ、投機筋などは「米ドル買い・円売り」にポジションが大きく傾斜していると見られることから、基本的に米ドル高・円安の余地は限られるのではないでしょうか。そのうえで、円安阻止介入が実現する可能性もあり、その場合は、米ドル買いポジションが逆流する可能性もあります。以上を踏まえ、今週の米ドル/円予想レンジは、147.5~153.5円を想定します。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
吉田 恒