<イギリスのEU再加盟はありえるか>スターマー新首相率いる労働党政権の外交戦略はどうなる?
Economist誌(2024年7月13日号)が労働党政権下での英国外交について論評する解説記事を掲載している。 キア・スターマーは7月5日に運よく英国首相となった。外交日程はさらに二つの幸運をもたらしている。 一つは、7月9日にワシントンDCで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席したことであり、もう一つは、7月18日にチャーチルの生誕地ブレナム宮殿で欧州政治共同体(EPC)をホストすることである。EPCとは、欧州連合(EU)の加盟国とそれを取り巻く国々による緩やかな会合である。 この二つの機会を通じて、新労働党政権は、英国の外交政策の継続性とその変化を示すことができる。英国の評判がボリス・ジョンソン時代に混沌となってしまったものを、真面目な中道派による安定的な政府という見方に変える効果も期待できるだろう。 NATO、ウクライナ、米国、中国といった外交政策の重要分野の多くにおいては、政権が代わっても多くの継続性が保たれるであろう。ワシントンDCにおいて、スターマー首相はNATOに対する「揺るぎない」支援を確言した。NATOへの支持をしっかりと打ち出すことは、労働党が政権担当能力を持つことを示すためにスターマーが重視している点である。 英国のウクライナに対する支持にも変わりがない。これは、スターマー首相がウクライナのゼレンスキー大統領に伝えたところである。新政権も、必要な期間にわたり30億ポンド(38億ドル、GDPの0.1%)の支援を行うとの前政権の約束を維持する考えである。 労働党は英米関係を重視する党であり、今年の11月の米大統領選挙で誰が当選しても、両国関係を良好に保つ考えである。ラミー新外相は、国防費をもっと上げろというのは、米国が欧州に求めていることだと欧州の同僚に伝えている。 中国についても、前政権の政策が継続する可能性が高い。消費財の貿易には開放性を維持しつつ、原子力、電気通信等の分野での中国の投資には慎重な見方をとることになろう。 一方、別の分野では変化が生じるであろう。まず、EUとの関係であり、労働党は欧州とより親密な関係を望んでいる。ラミー新外相は、ドイツ、ポーランド、スウェーデンを訪問した。