38年ぶり安値の円相場、もはや日本株の支援者にならず-相関関係示唆
(ブルームバーグ): 対ドルで1986年以来、約38年ぶりの安値を付けた円相場が日本株の押し上げ役である時代は終わろうとしている。
日経平均株価と円相場の30日間の相関関係は、6月に入りマイナスに転じた。マイナス転換は2月以来だが、円の持続的な下落が日本経済に悪影響を及ぼすことに対し投資家が懸念を強めるにつれ、この乖離(かいり)は拡大している。
止まらぬ円安が日本経済にとってマイナスとなる可能性が高まっている。原材料やエネルギーなどの輸入コストの上昇につながるほか、物価高を通じて消費者の購買力を低下させるリスクがあるためだ。
行き過ぎた円安を阻止しようと、政府・日本銀行が再度の為替介入を行うのではないかとの観測も日本株投資家が警戒感を強める要因の一つ。日本株市場では長年、円安は輸出企業の収益を押し上げる材料として好意的に受け止められてきたが、介入が行われれば円相場が不安定化し、今度は一転して輸出企業の業績に負担となりかねない。
時価総額国内トップのトヨタ自動車の前期(2024年3月期)営業利益を過去最高の5兆3529億円まで押し上げたのは紛れもなく円安効果で、同時に30数年ぶりの日経平均の史上最高値更新に大いに貢献した。しかし、歴史的な円安はドルで投資する海外投資家の運用収益を目減りさせており、海外勢は足元で日本株現物を5週連続で売り越している。
海外勢が日本株を5週連続で売り越し、1年3カ月ぶり長さ
円安を受けドル建て日経平均の年初来上昇率は4%未満にとどまり、米S&P500種株価指数の15%、香港ハンセン指数の6%高を大きくアンダーパフォームしている。アシンメトリック・アドバイザーズのストラテジスト、アミール・アンバーザデ氏は「投資家は円安がドルやユーロの収益に与える悪影響についてますます懸念を強めており、これがさらなる資金流出につながっている」とみる。
日銀は6月の金融政策決定会合で、国債買い入れを減らす計画を7月まで先送りし、市場を驚かせた。金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は、7月に政策金利を10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げることを69%織り込んでいるが、日米間の絶対的な金利差は依然として大きいままだ。