WANDS、“令和のロックバンド”として過去と未来を繋ぐ 第5期初ホールツアーで見せた現在進行形の姿
2019年11月、初期メンバーの柴崎浩(Gt)、木村真也(Key)、そして上原大史を3代目のボーカルに迎えて始動したWANDS第5期。昨年は第5期として2枚目のアルバム『Version 5.0』をリリースし、全国ライブハウスツアーを成功させるなど、精力的に活動を展開。往年の名曲たちに再び命を吹き込みながら、刺激的な新曲たちを通して第5期ならではの色を獲得してきた。そして2024年7月、始動後初となる東名阪ホールツアーを開催。7月8日のファイナル・東京ガーデンシアターには、上原とともに歩んできた約4年半の軌跡が結実した、感動の光景が広がっていた。 【画像】イケメンすぎるWANDS 3代目ボーカル 上原大史 定刻通りに暗転し、手拍子が湧く中、センターのお立ち台に立った柴崎がギターをかき鳴らしてライブのスタートを告げる。会場を切り裂くような鋭いリフは、『Version 5.0』のオープニングナンバー「We Will Never Give Up」だ。上原はステージ後方に設置された段上に陣取り、「やれるよな、東京!」とギラついたオーラを放つ。骨太なバンドサウンドに負けじとエネルギッシュな声を響かせ、一気にオーディエンスの心を掴んだ。 曲の後半にはセンターのお立ち台で柴崎と上原が並び立ち、スポットライトに照らされるふたりの堂々たる姿が、「これが第5期WANDSだ」と宣言していた。 続く「GET CHANCE GET GROW」ではのびやかな高音、「David Bowieのように」ではタイトなビートに乗せて艶のある低音を響かせ、多彩なボーカリゼーションをいかんなく発揮する上原。どっしりと構えつつ華やかなギターソロで魅了する柴崎を中心に、サポートメンバーふたりを加えたバンドのグルーヴも珠玉。初のホールツアーとは思えない佇まいで、広い会場をしっかり掌握していた。ツアーを通して、バンドの結束を高めてきたことが窺える。 ピアノとムーディなギターから始まる「賞味期限切れ I Love You」、上原がシャウト混じりに歌いあげた「FLOWER」、一転してフロント3人がドラム台に腰掛けてしっとり奏でた「空へ向かう木のように」など、1曲ごとにさまざまな表情を見せていく。その根底に共通するのは、“ロック”であること。クラシカルなハードロック要素や90年代J-ROCKのきらびやかなフレーバーが、令和の時代に聴くからこそひときわ眩しい。普遍性と革新性を持って今を生きるロックバンドの誇りを存分に体感した。 そのロックバンド感がさらに覚醒したのが、「SHOUT OUT!!」だ。「みなさんの魂の叫びをぶつけてください!」という上原の煽りから、リズムに合わせて盛大なコール&レスポンスが発生。一体感を高めて「honey」になだれ込むと、間奏で上原のアカペラに柴崎がギターで応えるという即興合戦を繰り広げた。ふたりのテクニックと絆を堪能したあとは、ジャジーなムードの「真っ赤なLip」でサポートメンバーの二家本亮介(Bs)と神田リョウ(Dr)が華麗なソロを披露し、柴崎のギターソロへと繋ぐ。オーディエンスだけでなく、ステージ上の熱量もどんどん上昇しているのが伝わってきた。 柴崎がマイクを取り、「上原と僕と木村(真也)くんで第5期WANDSを始動してから、4年半くらい経つんですけど。どの時期から好きになってくれた人も、みんなひとりひとりのおかげで今日を迎えられたと思っています。ありがとうございます!」と感謝を述べる。1曲目冒頭でギターがトラブったという話題から、上原も参加してフリートークが盛り上がり、「締め方がわからなくなりました(笑)」という微笑ましいオチに。こうしたゆるい雰囲気が生まれるのも、4年半の歩みがあってこそだろう。 そこから、タイトルコールで歓声が上がった「もっと強く抱きしめたなら[WANDS 第5期 ver.]」、「時の扉[WANDS 第5期 ver.]」、「愛を語るより口づけをかわそう[WANDS 第5期 ver.]」と90年代のヒットシングルが立て続けに贈られた。第5期バージョンとして歌いこなしつつ、マイクを客席に向けて、オーディエンスの歌声にも耳を傾ける上原。大合唱するオーディエンスとともに、色褪せないメロディに酔い痴れる。「愛を語るより口づけをかわそう」のアウトロを彩る柴崎のギターソロが全員の心に寄り添い、優しく会場を包み込んだ。 上原が「大切な人に想いを伝えたいという気持ちを込めて書いた曲です」と語ったバラード「愛を叫びたい」に続いて、最新シングル「大胆」へ。スリリングなサウンドが会場を駆け巡り、キャッチーなメロディが誰しもの体を踊らせる。第5期WANDSの新たな側面を示しつつ、早くもキラーチューンとしての力が漲っていた。今後のライブを支える1曲になるに違いない。 そして、「これからもみなさんの人生が素晴らしいものになりますように」と上原が言葉を添え、「WONDER STORY」が本編ラストを締め括った。ステージの端まで歩き、観客ひとりひとりに語りかけるように丁寧に歌を届けた上原は、間奏で超ロングトーンのアカペラを披露して圧倒。ミラーボールの光が輝く中、贅沢な余韻を残して4人はステージを下りた。 上原と柴崎がお揃いのグッズTシャツを着て登場し、「MILLION MILES AWAY[WANDS 第5期 ver.]」で幕を開けたアンコール。サポートメンバーふたりも交えてMCを取り、ツアーを振り返っていく。ファンクラブ限定公演を含めて4公演で終わることに対し「もっと(ライブを)やりたいね」と語り合う姿に、たしかな手応えが滲んでいた。 柴崎は「(第5期が4年半経ち)90年代にWANDSをやっていた期間を越えそう」と感慨深げな様子を見せる。一方の上原は、「(始動当初は)不安もあった」と赤裸々に告げ、「続けてこられたのはみなさんのおかげ」と何度も繰り返し感謝を口にした。暖かな拍手を受けて「引き続き頑張っていきたいので、よろしくお願いいたします!」と力強く宣言し、過去と未来への想いを込めたバラード「カナリア鳴いた頃に」を優しく歌いあげた。 フィナーレを飾る1曲は、もちろん「世界が終るまでは…[WANDS 第5期 ver.]」。最初はこの曲を第5期として演奏することにプレッシャーを感じることもあったのだろう。ひと言ひと言を大切に歌う上原も、ギターで支える柴崎も、感極まった表情で大合唱に揺れる会場を見つめていた。時代を越えて愛され続ける名曲が生む多幸感と、楽曲で繋がったたくさんの愛情に満たされて、初のホールツアーは大団円を迎えた。 過去を懐かしむのではなく、否定するわけでもなく、第5期WANDSは地に足をつけて令和のロックバンドとして突き進む。その意志を確かなものとして、まだまだ進化していく彼らに注目だ。
後藤寛子