「低アル飲料」を喜んで飲む人が知らない“真実” むしろ時代によってその基準は変化してきた
結論からいうと「時代によって変わる」のが実情だ。 例えば、「日経トレンディ」(日経BP)の2003年7月号に掲載された「果実テイストでボーダーレス化 『氷結』は独自の味を投入」という記事では「低アルコールドリンクとは〈中略〉アルコール度数が10%未満のアルコール飲料のこと」と書かれている。1%の誤記載ではない、10%なのだ。 つまり、この時代にアルコール度数9%のストゼロがあれば、こちらも低アルの部類に含まれていたということである。あくまでも「焼酎や日本酒と比べると」だ。
実際、このとき誌面で紹介されていた氷結をはじめ、「スキッシュ」(宝酒造)、「青春」(サントリー)、「旬果搾り」(アサヒ)のアルコール度数は、どれも5%前後だった。 こうなってくると、もはや「何が普通で、何が低アルなのか?」がわからなくなってくるのは筆者だけだろうか。「5%程度が普通」という考えは、本当にあなた独自の考えなのか、酒類メーカーの長きにわたるマーケティング戦略の影響がないと言えるのか……という話なのである。
ちなみに、2003年時点で低アル市場は1億ケースまで拡大しており、そのなかでも氷結は2002年のシェアで27.4%を占めていたそうだ。さすがに、前出した一覧で唯一生き残っているブランドだ。 そのほかにも、当時は「グビッ酎」(メルシャン)、「スーパーチューハイ」(サントリー)、「下町風味 酎ハイ」(協和発酵工業)、「ハイリキ」(旭化成・現アサヒ)、「ハイボーイ」(合同酒精)などが缶チューハイブームを牽引した。
さらに、居酒屋の定番となったカルピスサワー(カルピス・現アサヒ)も低アルを代表する存在である。1994年発売でアルコール度数は3~5%というレンジで、今でもコンビニにはだいたい置いてある。 ちなみに、年齢確認がある現在ではあり得ないが、当時は低アルの誤認が問題となっており、1993年には宝酒造を含めた10社が国民生活センターから注意を受けている。 「ジュースだと思ったらお酒だった」という描写が昔のマンガやアニメには多かった気がする(マンガ『クレヨンしんちゃん』にもそのようなエピソードがあった)が、これは当時の酒造メーカーは低アルをジュースくらい身近に、主婦をはじめとした女性を狙い撃ちしていたことの裏返しだろう。