【コラム連載中】元テレ東アナウンサー・池谷実悠が「実質無料で中国留学できた理由」
初回はたくさんの方に読んでいただき、ありがとうございました。 私がいる天津はいま、来週から気温が10度前後に下がり、本格的な冬を迎えようとしています。学校生活には少しずつ慣れてきて、友だちもできました。その友だちと仲良くなったきっかけが、ある日、彼女がこう声をかけてくれたことです。 【写真】ピンクが似合いすぎる…!池谷実悠「天津観光の秘蔵写真」 「あなた、新疆出身でしょ?」 日本にいる時は「ハーフ?」と聞かれることが多かったのですが、中国では「新疆人?」と聞かれることがとても多いです。新疆の人はアジア人にしては少し濃いめで、エキゾチックな顔つきが多く、私もそう見えたようです。 そこから彼女と仲良くなり、中国およびアジアの少数民族を研究する部活に一緒に入って、民族衣装を着て舞踊を踊ったりしています。 さて、第2回のテーマについて考えていたところ、もしかしたら、私と同じく社会人で海外留学を考えている方がいるかもしれないと思いました。少しでも参考になれたらと、今回は「受験よりも大変だった奨学金申請」についてお話ししていきたいと思います。 「大学院に進学した」と言うと、多くの人から「受験が大変だったでしょう」と労いの言葉をかけてもらえて嬉しいのですが、実は受験よりも大変だったのが奨学金の申請でした。家族は「お金を援助する」と言ってくれたのですが、自分が好きなことをするのに人のお金を使うというのは私のポリシーに反するので、もし奨学金が支給されなかったら留学は諦めようと思っていました。 日本でいう奨学金は返済しなければならないものがほとんど。私も実際に大学時代は奨学金を借りて、今年無事に完済しました。ところが中国には、授業料や寮費、生活費まで支給されて、返済不要の奨学金が存在します。実質無料で中国の大学院に留学することができる……! と意気込んだものの、申請のハードルが思っていたよりも高かった。 まず、合格率を上げるために、当時HSK4級しか持っていなかった私が猛勉強して5級を取得。その他にも、中国語で研究計画書を書いたり、何年も前に卒業した大学の先生に連絡をして英語で推薦状を書いていただいたり。中国語での調べ物も多く、頭を抱えました。 書類審査に通過すると、今度は面接。もちろん中国語で話さなくてはいけない場面もあります。なぜ留学しようと思ったのか、なぜ翻訳を専攻しようと思ったかなど、想定問答集を自分で作成し、それを訳して覚えて……。受験と同時に就活しているような感覚でした。 無事に奨学金面接の合格通知が届くと、今度は大学の受験が待っています。奨学金の審査を通過した後に大学の試験を受けるのです。奨学生は第3希望まで学校を選択し、第1希望から順に受験をして、合格した人のみ奨学金の発給が決定するというシステム。第3希望まで受からなかったら奨学金発給は取り消しになるので、最後まで油断できません。 私が第1志望に選択した大学は北京の南東約120kmに位置する天津にあります。北京を東京とすると、埼玉や神奈川という距離感です。キャンパスはもともと租界だったエリアの中心に建っており、校舎も租界時代の建築をそのまま利用しているとあって、歴史好きの私にはたまらない環境でした。 4時間に及んだ筆記試験は、日本語と中国語それぞれA4用紙2ページ分ほどの文章を訳す内容でした。最初は4時間もかかるわけないと思ったのですが、専門用語が次々と出てきて、制限時間ギリギリでやっと訳し終えた。日本語から中国語に訳す問題ではなんと英単語も登場していて、発狂しそうになりました(笑)。 さらにリモートでの面接試験はすべて中国語で、研究計画書をもとに今後やっていきたい研究について質問されたり、幼少期に中国に抱いていたイメージなど、志望理由を深掘りされました。 こうして長い受験期間を経て、今年の7月頃にようやく第1志望の大学から正式な合格通知を受け取ることができました。 この間に結婚して式も挙げたのですが、なんと受験期間と結婚式の準備期間がピッタリ重なりました。人生で一番の喜びと……とんでもない苦労を経験しました(笑)。 ちなみに夫とは交際1年未満のスピード婚なので、出会ったころにはすでに留学の準備に取り掛かっていました。付き合い始めてすぐに、いや? 付き合う前だったかな? 「私、留学するんだよね」と伝えてあったので、結婚して半年ほどでの単身留学もすんなり受け入れてもらい、とても感謝しています。と同時に、大切なことは最初に話しておいたほうがいいと実感しました。あの時の自分、ナイス! そして、すぐに日本からいなくなるとわかっていたのに、私と付き合おうと思ってくれた夫、ありがとう。私も変わり者だけど、夫もだいぶ変わっていると思う(笑)。この大切な一歩を無駄にしないために、今まさに、(自称)破竹の勢いで学問に邁進中なのです。 有料版『FRIDAY GOLD』では【“女子大学院生”池谷実悠の「ふつうじゃな~い留学記」】第1回「池谷実悠、中国に行ってきます!」を掲載している。 テレビという華やかな世界から離れ、海外留学を決断した池谷さんの思いをぜひご覧いただきたい。 文・写真:池谷実悠
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