医師が教える「子ども潰す親」と「伸ばす親」の決定的な違い
良かれと思ってやっている、その声かけ、関係づくりが、子どもの個性・才能をつぶしている!?親として、どのような意識をもって、わが子との関係を築き、声かけやコミュニケーションをとれば正解なのか?メンタルコーチで産業医のスポーツドクターが具体的な思考法と実践法をわかりやすく解説する。本稿は、辻秀一『メンタルドクターが教える 個性を輝かせる子育て、つぶす子育て』(フォレスト出版)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 子どもの個性や才能を 潰しかねない「認知的思考」 「自分らしく生きてほしい」というのは、どんな親にとっても心からの願いであるはずです。 しかし、多くの親が子どもには自分らしく生きてほしいと思う一方で、「何かしらの社会的尺度の評価を得てほしい」といった認知的思考が強くなってしまいます。 親が子育てする際の最大のネックは、人間固有の認知的な思考の癖です。 子育てには、油断すると思考しかねない「認知的思考」から離れて、新しく苦手に感じる、もう1つの思考を親が意識することが必要です。 もう1つの思考とは、私は「認知的思考」と区別するために「非認知的思考」と呼んでいます。 認知的思考は、行動や結果など、外界に対しての対処的な脳の使い方です。これは、学校で習ったり、社会で生きる上で必要で、頭がいいと言われる人の脳の使い方です。 一方、非認知的思考は、人間の内面に向いた非定量的な部分を大切にする思考です。つまり、自分らしさや人間力につながり、そこに価値を重んじる脳の使い方です。自分自身に向き合う脳とも言えます。 しかし残念ながら、人間は誰でも「非認知的思考」が苦手です。非認知的思考がなくても、大人は社会に出て活躍することはできるので、脳は無意識に非認知的な思考を軽視してしまいます。
ところが、子育てになったとたんに、子どもは他の競い合う相手ではなく、きわめて自分自身に近い存在になります。 すると、親が外界や日常社会で使っている認知的思考のままだと、自分ではない自分の扱い方が苦手なので、どうすればいいのかわからなくなり、混乱してしまう――。 これが、子育てが苦しくなってしまう原因とも言えるでしょう。しかし、子育てからは逃げられないので、これまでの認知的な思考の癖を中心にした子育てになってしまうのです。つまり、いつもどこかで結果を追い求め、他者と競争したり、比べたりしてしまうわけです。子どもも親も、限られたモノサシで比べたり、競争するものではないのに……。 ● 親は「非認知的思考」をもって 子どもの個性・才能を信じよう 自分らしさこそ、自分に向き合う「非認知的思考」です。 親自身が「自分の自分らしさ」を大事に生きていなければ、子どもに対しても、「自分らしさ」を第一にした声かけができないでしょう。 日常生活の中で、学歴や偏差値、収入など、誰かが決めた、限られた尺度で人の価値が決まるのではなく、「その人しかない、その子どもにしかない個性や才能にこそ、価値がある」と親が考えていること、信用していることが何よりも大切です。