誰もアフガンのことを考えず、アメリカ製の民主主義を押しつけた 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(1)
民主化プロセスが始まった後も、アフガンでは有力軍閥が各民族を仕切り、独自の徴税や麻薬取引などを通じて強力な私兵を維持していた。国家意思の決定には長い時間をかけた対話が不可欠だったが、「アメリカ製の民主主義」ではスピードが最優先された。トップダウンで政治を進めるため、新憲法は国民が直接選出する大統領に強い権限を与えるアメリカ型の大統領制を採用した。 北部同盟を率いた司令官、故マスードの息子アフマド・マスードは、過度な権限集中の弊害を批判する。「勝者総取りのシステムが、大統領ポストを巡る熱狂的な競争を駆り立てた」。大統領選の度に不正疑惑が持ち上がり、各候補者の出身民族間で不信感が増殖した。マスードは、民族間での利益の奪い合いが「社会に大きな亀裂を生み出した」と指摘する。 ▽民主化はゼロに戻った 2021年のタリバン復権後、中学1年以降の女子教育は禁じられ、女性は就労の自由を奪われた。女性教師のタマンナ・ムスタマンディ(33)は北部マザリシャリフで女性抑圧に抗議の声を上げた。今はタリバンに追われる身だ。
知識層が自由や男女平等という価値観を受け入れ、保守的なアフガン社会は変わりつつあったが「ゼロに戻った」という。 「教育を受けた人たちは次々に外国に逃げている。私もインドに逃げる。4歳の娘を育てるにはそれしかない」(続く) × × × (筆者略歴) 新里環 2010年共同通信社入社。広島や千葉支局を経て、2021年からイスラマバード兼カブール支局長。核や人権問題を取材してきた。 木村一浩 1993年共同通信社入社。大阪社会部、和歌山支局などを経て、カブール、カイロ、ワシントンに駐在。2度目のカイロ在勤後、2022年からバンコク兼ヤンゴン支局長。紛争やテロ、イスラム過激派を取材してきた。 誇り高い戦士たちは戦後、国造りを怠り目の前の大金に手を付けた 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(2)