民主「かりゆしNG」参院の服装規定とは 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
2015年5月、参院議院運営委員会理事会で、6月最初の本会議で沖縄伝統の服装「かりゆし」を着ての出席を認めないと決めました。夏の健康や温暖化防止に加えて11年の東日本大震災で定着した節電目的での軽装は国会にも及び、第一次安倍晋三政権の07年からは国務大臣らの会議である閣議を6月最初の日には「かりゆし閣議」とするのも定着してきました。 【図表】沖縄でたびたび浮上する「独立」論 背景と歴史は
参院の本会議場では上着着用が決まり
対象となるのは本会議。話し合いの場になったのは議院運営委員会(議運委)。参議院はこれまで「先例」と「申し合わせ」に基づき、本会議では上着着用を義務づけてきました。自民党がかりゆし着用を提案したのに対して民主党が反対し、結局「できない」となりました。他の主な野党は共産党に至るまで自民党案を支持しています。 憲法58条は衆参両院に「会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め」る権利を認めており、その結果できたのが衆議院規則と参議院規則です。参議院はそこで「議院の品位を重んじ」る目的として「議場又は委員会議室に入る者は、帽子、外とう、襟巻、傘、つえの類を着用し又は携帯してはならない」というドレスコードがあります。 先例は、明記されていないながら守るのを当然視する心がけです。例えば衆議院議員総選挙の後に開かれる特別国会で、憲法は首相指名選挙を「他のすべての案件に先立って行」えと定めますが、現実には新たに選出された議員がどこに座るかなどを決めるのが先になるといったものです。
自民は「かりゆしだけ例外」を提案
自民党は15年4月から「かりゆしウェアの日」の6月1日か直後の本会議で、上着なしでかりゆしを着ることを提案。民主党から「上着着用のルールを変更するのか」と問われると、「かりゆしだけ例外にする」との考えを示しました。ここで問題となるのは「かりゆしは上着なのか」という点でしょう。 沖縄では夏の正装として認知されています。「例外とする」とは、「かりゆしだけは上着を着ないでいい」というのか、「かりゆしは上着か」という2つの議論が混ざっているようにみえます。仮に前者としたら「かりゆしに上着をはおればOK」のはず。しかし、政府がかりゆしを沖縄の正装として普及させようとしていて、「かりゆし閣議」は民主党政権でもやっていたので、反対するのは不可解です。 毎日新聞の取材に対して、民主党の前川清成議運委理事は「特別なルールを作ると特殊性を強調し、沖縄は日本ではないという理由付けにつながってしまう」と説明しています。本当にそうでしょうか。沖縄選出議員に着用を義務づけているわけでも、本土選出議員の着用を禁じているわけでもありません。現に民主党沖縄県連はかりゆしは正装であり、伝統文化の発展促進として民主が掲げる地域主権とも一致すると意見書で指摘し、党に再考を促しているほどです。