民主「かりゆしNG」参院の服装規定とは 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
かりゆしは「上着」ではない?
奇妙とも思える民主党の姿勢の背景には、昨年の因縁がありそうです。参議院の常任委員長(女性)が本会議でかりゆしを来て報告を行ったのに対して、民主党が議運委で「申し合わせ違反」と反発しました。自民党は認めてほしいと対抗し、話し合いがつきませんでした。議運委の申し合わせは先例と同程度の意味を持ち、そこに諮らなかったから「申し合わせ違反」と苦情を述べたのです。かりゆしが正装かどうかの議論とは微妙に異なります。かりゆしが上着かどうかはいまだ「グレーゾーン」のようですから。 これまでにも服装規定が変わった事例はあります。代表的なのがクールビズでしょう。2005年5月、議運委理事会は6月1日から9月30日まで院内の服装について上着、ネクタイを着用しないのを認めました。本会議場の上着着用はそのままです。東日本大震災直後の11年4月の議運委理事会は、電力需給が厳しさを増すのを想定して5月1日から10月31日ま上着、ネクタイを着用しない期間を広げました。 なお衆議院は、規則を改正して女性議員限定で上着なしでのかりゆし着用を認めています。
ベレー帽、マフラー、覆面、ジーンズ……
1991年、日本社会党の長谷百合子衆議院議員がベレー帽を着用して本会議に出席しました。参議院と同じく衆議院規則でも本会議場の帽子着用は禁止です。前年当選した後の登院でアウトだと知っていたもののトレードマークを押し通すべく確信的にかぶってきました。1946年初当選の山口シヅエ、49年初当選の堤ツルヨ両衆議院議員もやはりベレー帽問題を起こしています。 2013年に日本維新の会から当選したアントニオ猪木参院議員は国会召集日に赤いマフラーをつけて本会議場へ入ろうとしたところ、国会の警務などを行う衛視にとがめられ外すよう求められました。禁止されている「襟巻」とみなされたのです。14年1月には山本太郎参議院議員本会議でスパッツ姿で臨んだのが議運委理事会で問題視されました。こちらは「品位に欠ける」が理由です 2014年10月には松島みどり法務大臣がストールを着用して議運委理事会で紛糾。松島大臣はストールではなくスカーフであり、洋服の一部だと反論しました。やはり「襟巻」にあたるかどうかでのもめごとでした。議運委は結局禁止の結論を下しています。 認められたケースも。2009年1月、僧侶でもある藤谷光信参議院議員正装の法衣(ほうえ)をまとって国会に臨みました。前年には許可されなかったので、改めて議運委に事前申請し今度は許可されての登院でした。 地方議会となるとジーンズ姿の新潟市議が問題視されたり、プロレスラーのザ・グレート・サスケ岩手県議会議員が03年、覆面姿での登院を問われるなどさまざまなケースがあります。ジーンズが品位にかけるとする一方、「国内ジーンズ発祥の地」と自認する倉敷市議会は07年から9月定例議会を「ジーンズ議会」とし着用を呼びかけています。
--------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】