下克上日本シリーズへ!真価問われる日本ハム・新庄監督の手腕…伊藤大海「113球」熱投の意図とは
◆ 新庄劇場の集大成へ!エース伊藤のCS起用法は? 2年連続最下位から2位に躍進した今季の日本ハム。新庄剛志監督が我慢強く起用しつづけてきた若手の飛躍がチームの6年ぶりAクラスにつながった。 「新庄チルドレン」と呼ばれる選手の象徴となったのが、“パ・リーグのエース”と呼ばれるまで成長した伊藤大海だろう。 ルーキーイヤーの2021年から2年連続で10勝、防御率2点台をマークしていたが、3年目の昨季は7勝(10敗)、防御率3.46と不本意なシーズンを送った。 それでも新庄監督は今季の開幕投手に伊藤を抜擢。すると、伊藤は6回4安打無失点の好投で勝利を手にし、チームを勢いづかせた。 その後も伊藤が登板した試合でチームは開幕から7連勝。自身も6月上旬に初黒星を喫するまで4連勝と、チームの開幕ダッシュに大きく貢献した。 終わってみれば、今季は26試合に登板して14勝5敗、防御率2.65という自己ベストの成績で、最多勝と最高勝率の2冠が確定。大黒柱として自身初のクライマックスシリーズ(CS)に向かう。 ところが、12日(土)に開幕するロッテとのCSファーストステージで、伊藤がマウンドに上がる機会はないかもしれない。 というのも、チームの今季最終戦となった8日の楽天戦で、伊藤は15勝目をかけて先発するも、7回2失点の粘投むなしく今季5敗目を喫した上に113球を投げているからだ。 前述した2つのタイトルはすでに手中に収めていたため、単独最多勝を懸けての登板だったが、結局、最多勝は有原航平(ソフトバンク)と分け合う形となった。登板間隔を考えれば、少なくともファーストステージ2戦目までの先発はなくなったといえるだろう。 ファーストステージは2戦先勝方式で行われる超短期決戦だけに、本来ならエース格の投手を初戦ないし第2戦に登板させるのが常套手段。2連敗を喫すれば、登板機会がないまま終戦を迎えるためだ。 ところが伊藤が第2戦に投げるとすれば、中4日での登板となる。ルーキーイヤーから離脱することなく投げ続けてきたタフな右腕とはいえ、仮に登板したとしても球数は限られるだろう。 リーグ2位から下克上を目指す新庄監督とすれば、日本シリーズに進出できないなら、ファーストステージ敗退も、ファイナルステージ敗退も同じことなのかもしれない。つまり、伊藤以外の投手でファーストステージを乗り切り、ソフトバンクとのファイナル第1戦(16日開幕)に伊藤を登板させる算段なのではないか。そうすれば、伊藤がソフトバンクとのファイナルで2度マウンドに上がることも可能になる。 もちろんロッテとの戦いがもつれるようなら、第3戦の先発、ないしは第2戦でのリリーフ登板も考えられるだろう。ただ、日本ハムはロッテに対して18勝6敗1分と大きく勝ち越しており、絶対の自信を持つ。しかも、伊藤以上にロッテ戦で結果を残している先発投手も少なくない。 左腕の加藤貴之は今季ロッテ相手に5勝1敗、防御率1.85。同じく左腕の山崎福也は2勝0敗、防御率0.59とほぼ完璧にマリーンズ打線を封じている。 また、北山亘基もロッテ戦は今季1試合を投げただけだが、完封勝利を収めており、伊藤をファイナル第1戦に温存することは理にかなっているともいえる。 もちろん伊藤が登板しないまま敗退するリスクもあるが、新庄監督が見据えるのはあくまでも日本シリーズの大舞台。新庄劇場の集大成はまもなく幕を開ける。 文=八木遊(やぎ・ゆう)
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