アノニマスの「KKK支持者リスト」公表をめぐる大義と異論
世界的なネットワークを持ち、これまでにも政府機関やテロ組織、麻薬組織などに対するサイバー攻撃を繰り返してきたハクティビスト(ハッカーとアクティビストを足して作られた造語)集団の「アノニマス」は5日、アメリカの白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」(KKK)の支持者とされる約1000人の実名や個人情報をネット上で公表しました。現在も数千人規模で存在するとされるKKK支持者の個人情報を公にしたアノニマスの行動に対しては、称賛と批判の両方が存在します。 【写真】米警官による黒人暴行 「息ができない」アメリカの人種と犯罪の現在
リサーチで作り上げた支持者リスト
アノニマスは支持者リストの公表を「オペレーションKKK」と名付け、昨年夏に米ミズーリ州ファーガソンで黒人青年が白人警察官によって射殺されたことがきっかけで発生した抗議デモで、KKKがデモの参加者や支持者に危害を加えるとネット上で声明を出したことに対して応戦すると表明していました。 アノニマスの過去の活動を振り返ると、ハクティビストと呼ばれるように、特定の政府機関や団体にサイバー攻撃を仕掛け、サーバーをダウンさせてウェブサイトを閲覧できないようにしたり、ウェブサイトのコンテンツを書き換えたりする抗議行動が主でした。しかし、2011年頃からハッキングした個人情報をネット上で公表する手法も多用されるようになります。アノニマスはKKKの支持者リスト作成にあたって、ハッキングによる個人情報の盗み出しはなかったと主張。SNS上の書き込みに関するリサーチや専門家への取材などを1年近くかけて行い、約1000人を「特定」したとしています。 人種差別に対する抗議や啓蒙を行い、ヘイトグループに関するリサーチを続けるアメリカの非営利団体「南部貧困法律センター」の調べでは、KKK支持者の数は1920年代にピークに達し、アメリカ全土に約400万人のメンバーが存在しました。KKKといえば黒人に対する暴力のみがクローズアップされますが、戦前にヨーロッパからカトリック教徒やユダヤ人が大挙してやってきた時期に、組織としては最高潮にありました。その後、公民権運動が盛んになったことや、組織内での権力闘争が原因で離脱者が相次いだこともあり、KKKの影響力は大幅に低下。現在の支持者は数千人程度とみられています。