朝ドラ『虎に翼』制作陣が作品に込めた思い。「“弱い立場の人みんなに届け”と願いながら」「昔の話だけど昔の話じゃない」
現在放送中の連続テレビ小説『虎に翼』が、女性をエンパワーメントする番組として大きな反響を呼んでいる。女性の権利・地位が著しく不平等だった昭和の時代、法曹界に身を投じ、奮闘するヒロイン・寅子の姿に共感を抱く視聴者は多い。そんな番組制作に携わるNHKは、イギリスのBBCが2017年に開始した「50:50 The Equality Project」を受け、同企画への参加を2021年からはじめた。本企画は、番組出演者の男女比をカウントすることで、女性出演者の割合を増やす取り組みである。ドラマに込めた思い、50:50プロジェクト参加後の変化について、『虎に翼』制作に携わる尾崎裕和さんと石澤かおるさん、局内での50:50プロジェクト事務局を務める石川敬子(たかこ)さんにお話をうかがった。 (構成◎碧月はる 撮影◎本社 奥西義和) 【写真】『虎に翼』を熱く語る制作陣 * * * * * * * ◆なにかを決断することで人生は変わる 今回の朝ドラのモデルとなったのは、日本ではじめての女性弁護士である三淵嘉子さん。女性が法曹界で活躍する道を切り開いた第一人者である。 ――連続テレビ小説『虎に翼』制作にあたり、物語のテーマを決めた経緯、きっかけについて教えてください。 尾崎:企画を考える前の段階から、脚本を『恋せぬふたり』でご一緒した吉田恵里香さんにお願いしていました。そこからプロデューサーの石澤さんとも一緒に企画を練る中で、三淵嘉子さんを主人公のモデルにしたドラマをつくりましょう、ということになって。「寅子の物語」をみんなでつくっていきました。 ――番組に対する視聴者からの反響はいかがですか。 尾崎:昭和の戦前・戦後の時代、女性がキャリアの道を築いていく過程で、様々な苦労に直面するところに共感していただいていると感じます。 石澤:特に印象的だったのは、放送1週目で寅子の進学を反対していた母親のはるさんが、直前までお見合い用の振り袖を買いに行くと言っていたのに、真逆に振り切って六法全書を買いに行くところ。ここは皆さんからの反響がすごく大きかったですね。 「私もやりたいことがあったときに親に反対された」など、似たような体験をされた方がとても多かったようで。寅子の人生に起こるいろんなことが、「私もああだった」と皆さんの記憶を引き戻してしまうらしく、自分のエピソードを書いたり語ったりしてくれる方が多いように思います。 ――寅子の幼少期を描かなかったことには、何か理由があるのでしょうか。 尾崎:寅子が女学校を卒業する間際に、法律の世界に足を踏み入れる決断をしたところが、主人公のスタート地点として一番ふさわしかったので、そこから描きはじめました。幼少期になにか運命的な出来事があったから、というわけではなく、ある種平凡で大きな苦労もなく育ってきた人でも、なにかを決断することで人生が変わる。そこが一番重要なポイントだと思ったんです。 ――寅子が司法試験に合格した祝賀会の場で、場の空気に迎合せず、怒りをにじませながら自らの思いを主張する姿が印象的でした。 尾崎:寅子は、一緒に学んできた女子部の人たちをはじめ、多くの女性の思いを背負ってあの場にいました。そこであふれた感情は喜びではなく、世の中の矛盾に対する怒りだったのだと思います。台詞にもあった通り、「志半ばで諦めた友。そもそも学ぶことができなかった、その選択肢があることすら知らなかったご婦人方がいること」を寅子は知っていた。あの場に行き着くまでに寅子が積み重ねてきた経験や思い、怒りが、あそこで発露したんです。
【関連記事】
- 明日の『虎に翼』あらすじ。道男(和田庵)に対し何ができるか悩む寅子(伊藤沙莉)。そんな中、希望の光となる懐かしい人との再開が…<ネタバレあり>
- 『虎に翼』懸念していたことが現実に…後半5分の衝撃展開に視聴者動揺「いつの間にか呼び方が『おばさん』から『花江ちゃん』に」「寅子の判断軽率すぎ」「はるさん退場はまだ早い」
- 明日の『虎に翼』あらすじ。猪爪家を飛び出した道男(和田庵)。責任を感じたはる(石田ゆり子)は…<ネタバレあり>
- 寅子結婚!初夜を迎えるが…『虎に翼』になぜここまで惹きつけられるのか。社会派色とエンタメ色を伊藤沙莉が絶妙に演じ切る
- 『虎に翼』よねの頑な態度に視聴者困惑…「いつ人を信じられるようになるんだ」「よねも変わらなきゃ」「寅子の『よねさんと轟さんだけでも無理』との言葉がすべて」