2024年「介護事業者」倒産 過去最多172件「訪問介護」が急増、小規模事業者の淘汰加速
2024年「老人福祉・介護事業」の倒産調査
2024年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が、過去最多の172件(前年比40.9%増)に達したことがわかった。これまで最多だった2022年の143件を29件上回った。ヘルパー不足や集合住宅型との競合、基本報酬のマイナス改定などが影響した「訪問介護」が過去最多の81件、多様化したニーズに対応できなかった「デイサービス」も過去2番目の56件、有料老人ホームも過去最多の18件と、いずれも増加した。 高齢化が進むなか、人手不足の解消は容易でなく、介護事業者の経営効率化は一刻を争う問題になっている。コロナ禍で悪化した経営を立て直せず、物価高の中で多様化するニーズや人材確保が難しい事業者の倒産は2025年も増加する可能性が高い。 介護保険法が施行された2000年以降の介護事業者の倒産を集計した。2024年の介護事業者の倒産(負債1,000万円以上)は、過去最多の172件だった。介護事業者の倒産は、2016年に年間100件を超えた。コロナ禍も利用控えなどで増加をたどり、コロナ関連支援で2021年は一時的に減少したが、支援縮小とともに再び増加に転じ、2022年はデイサービスグループの連鎖倒産も重なり143件に達した。2024年はさらに上回る172件発生し、事態の深刻さが深まっている。
原因別では、最多が販売不振(売上不振)の125件(構成比72.6%)で、破産が162件(同94.1%)と利用者減少から破産を選択せざるを得ない苦境がうかがえる。 また、個人企業他を含む資本金1,000万円未満が149件(同86.6%)、従業員10人未満が143件(同83.1%)、負債1億円未満が134件(同77.9%)と、小・零細事業者の淘汰が目立つ。 業種別では、「訪問介護」が過去最多の2023年の67件を上回る81件(前年比20.8%増)発生。デイサービスなど「通所・短期入所介護」は、約30社の連鎖倒産が押し上げた2022年(69件)に次ぐ56件(同36.5%増)。「有料老人ホーム」は最多だった2018年の14件を上回る18件(同350.0%増)と、主な3業種でいずれも高水準だった。 高齢者社会が本格的に到来するが、介護事業者の倒産は介護難民が生じる可能性もあり、社会問題化している。地域に根ざした小・零細事業者と大手事業者の共存を見出す一方で、効率化や協働化などの支援が急務になっている。 ※ 本調査は、「老人福祉・介護事業」を対象に集計した。内訳は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他に分類。本調査は、介護保険制度が始まった2000年から、負債1,000万円以上の倒産を集計している。