エベレスト登山中に被災した元モデルが、4カ月後にネパールで「いちご起業」するまで
ネパールで定着した「パック入りいちご」
契約農家と販路は決まったものの、いちごができるまでには異国の地・ネパールで生まれ育ったスタッフとのコミュニケーションにおいて何度も壁にぶつかったという。 「日本人なら1言ったら10の想像力ができる人も多い。でも、ネパールの人たちは、1言って1で返してくれるとは限らない。何回も『これはできているか』『あれはどうなっているか』とリマインドして進めていきました」 2023年末に日本に住んだ経験を持つネパール人が入社することになり、現在は、スタッフとの文化の溝はずいぶん埋まったと話してくれた。 袋入りではなく、綺麗にパックにフィルムをかけた状態で陳列されるいちごパックは、今やネパール国内では周知のものだ。この日本式の売り方を真似る同業者も出てきているという。 さらに、その評判は隣国インドにまで広まっている。ネパールのお土産でHime Berryを食べたというインド人から、「おいしすぎてびっくりした。こんないちご食べたことがないから、輸入したい」と、直接問い合わせが来たこともあった。 右も左もわからない農業を、言葉も分からぬ地・ネパールで、「役に立ちたい」という思いだけでスタート。今や国を越えて知られるまでに成長させた若山だが、2024年4月には東京・原宿にオープンした東急プラザ原宿「ハラカド」にエシカルショップ「 SEPLÚMO(セプルモ)」も開業した。 ここでは、Hime Berryのジャムのほか、まだ日本でほとんど展開されていないエシカルなアイテムも世界中から取り揃えている。 インド人からのラブコールもあったように、Hime Berryが「ネパールを代表するブランド」として世界中で食べられる未来を夢見る若山。 ゆくゆくは、マンゴーや石鹸など、さまざまなネパールの国産品が有名になっていけばいいと話す。 Our Farmsでも次なる挑戦として、いちご以外の農作物の栽培も構想している。 「『Our Farmsの野菜を食べると元気になるし、平和な気持ちになって自分を高められる』。食べた人にそう言ってもらえるようなパワーを与えられるブランドに育てていきたいです」
那須凪瑳
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