「時速180km」なんて絶対出さないのに、自動車メーターはなぜこんな表示になっているのか?
「時速180km表示」の謎
では、なぜスピードメーターが時速180kmまで表示されているのか。自動車が法定速度を超える性能を持っている以上、スピードメーターもその性能に合わせて、対応する速度まで表示する必要があるのは当然だ。実際、メーターを見ていると、思っていたよりもスピードが出ていることに気づくこともある。 もし時速100kmまでしか表示されていないと、自分が時速130kmや150kmで走っているのかを知ることができなくなってしまう。そのため、スピードメーターはドライバーに過度な速度を警告し、自制を促す役割も果たしているのだ。 また、ときには災害や事故から身を守るために、制限速度を超えることも考えなければならない場面がある。例えば、落石があった場合、急加速で回避できることもあるし、自動車事故においても、急ブレーキでは間に合わず、スピードを上げることで回避できる状況があるかもしれない。 こうした命の危険から自分を守るために、時速100km以上出せる性能が必要になるのだ。また、世界中でその自動車が使われることを考えると、各国の法定速度は異なるため、世界基準に合わせて時速180kmに設定されたという説もある。
「速度」に明確な根拠なし
安全性やさまざまなケースを考慮して、法定速度を超える速度が表示されているスピードメーター。しかし、筆者(喜多崇由、フリーライター)が感じたのは、メーターや速度性能の設定基準が曖昧だという点だ。 一般的には、日本自動車工業会や各自動車メーカーの自主規制がその根拠とされ、時速180kmという数字も 「6%の上り勾配を100km/hを維持するには、平坦路で180km/h相当の出力になる」 というものだが、これがいつ、どのように決められたかは明確ではない。 自動車の性能は向上しており、この数値が安全を保ちながら実用的な性能を維持するために本当に必要なものかどうかは不明確だ。損保ジャパンの2024年3月号のマンスリーリポートによると、速度超過による死亡事故率は、超過しない場合の 「9.2倍」 に達し、車の衝撃力はスピードの2乗に比例するとしている。 「速度は命に直結する」 だけに、安全を確保しつつ、十分な性能を発揮できる速度性能についての検証が必要だ。もちろん、ドライバーが法定速度を守ることはいうまでもない。
喜多崇由(フリーライター)