電撃訪問ミスターの前では負けられない!! 今季最長4時間25分の激闘ドロー
◆JERA セ・リーグ 巨人1―1中日=延長12回=(21日・東京ドーム) 巨人は阿部慎之助監督(45)が執念の采配を見せ、中日と引き分けた。7回に1点を先制されたが、その裏に無死一塁から丸に代走・重信を起用し、二盗に成功。支配下登録即2番起用した立岡宗一郎外野手(34)が送り、吉川の同点犠飛につなげた。先発の山崎伊織投手(25)は8回途中1失点で、救援陣は無失点リレー。試合前に長嶋茂雄終身名誉監督(88)=報知新聞社客員=から激励を受けた阿部監督が、1点にこだわるタクトで今季4度目のドローに持ち込んだ。 延長12回の激闘を終えた阿部監督の視線は、すでに次を見据えていた。今季最長4時間25分の戦いは、1―1で決着つかず、今季4度目の引き分け。好機を作りながらも2点目が遠く、「チャンスで打てないだけで、何とかしようとしているのは見えるので。まあ、明日は打ってくれるでしょう」と次戦での選手の奮起に期待した。 勝負手が実ったドローだった。両軍無得点の7回、田中のソロで先制を許したが、直後の攻撃で前のめりに動いた。先頭の丸が遊撃内野安打で出塁すると、すかさず代走・重信を起用。中日に絶対的守護神・マルティネスが控えていることも考慮した采配だった。足のスペシャリストは、続く立岡の打席で二盗に成功し、好機を拡大した。支配下復帰即スタメンとなった立岡が送りバントを決め、1死三塁から吉川が同点の中犠飛。3番打者は「みんなでつないだチャンスだったので、どんな形でも点につなげたいと思っていた」と全員の思いを受け止め、結果を出した。 恩師の激励が、目の前の1点にベストを尽くすタクトにつながった。敵地・マツダで広島に3連敗して本拠に戻った。そんなチーム状況を案じ、長嶋終身名誉監督が試合前、東京Dを電撃訪問した。知らせを聞いた阿部監督は球場玄関で出迎え、「すみません、広島で3つやられました」と頭を下げた。ミスターはまな弟子の肩を左手でさすりながら、こう言った。「大丈夫だ。やり返せばいい。いい采配はできている。ここからだよ。一戦必勝でいこう」。ベンチ裏の一室に移動すると、チーム状況や今後の展望、個々の調子も含めて2人だけの時間を過ごした。 試合前には「選手を集めます」という指揮官に先導され、ミスターが野手陣の中心に立った。「勝つ、勝つ、勝~つ!」と声を張り、選手を鼓舞した。長嶋さんは「交流戦前に勢いをつけておきたい。ここらで一発、気合を入れておきたかったんだ。でも、阿部監督は冷静だったな」と頼もしそうに振り返った。 攻撃陣が12残塁と決め手を欠く中、投手陣は8回途中まで1失点と好投した先発の山崎伊ら7投手のリレーで、中日に勝ち越しを許さなかった。延長11回の萩尾の送りバント失敗などミスもあったが、長嶋さんの思いを受け止め、何とかドローに持ち込んだ。今季は44試合で計108点、同110失点。総得点が総失点を下回る中、貯金2の3位に位置する。「まだまだ、ここからだぞ」。ミスターの言葉を胸に、一戦必勝で次戦こそ、しぶとく愚直に勝利をつかむ。(井上 信太郎)
報知新聞社