生命保険、じつは老後の保障には不向き 生保会社社員が選ぶ保険とは?
「先進医療」のお世話になる確率はどれくらい? 保険のそもそもの役割を考えてみる
一部のがんに有効とされる「先進医療」には300万円くらいの実費がかかるという情報があっても「確率論」で考えます。第38回先進医療会議「平成27年度実績報告」によると、その類の治療の実施件数は年間5000件弱ですから、がんに罹る人が年間100万人として「がん患者の1000人に5人弱が受ける治療」と見ます。 そして「がんに罹る確率は現役世代では10%未満」であることから「0.0005%の確率で起こることに、毎月一定額の出費をすることになる。あまり心配してもキリがないのではないか」と判断するのです。 さらに「保険が有効なのは目先の保障である」という認識もあります。一般の消費者は「一生涯の保障が安心」と考えがちですが、ある時点で結んだ契約の内容がずっと通用する、とは思っていないのです。実際、近年は入院が短期化していて、入院日数に対応して給付金が支払われる「医療保険」の価値は下がっています。通院で治療できる「がん」に罹った人が、入院時と死亡時の保障が厚い、古い「がん保険」に加入していて、給付金を1円も受け取っていない例もあります。 長期契約には、時代の変化に対応できなくなるリスクがあるのです。そういう意味で「介護保険」もあまり人気がありません。現役世代であれば、50歳で加入しても「20~30年後くらいに通用する保険」を選ぶのは難しい、と考えるのです。 私が「自動車保険の加入法が正しい」と気づいたのは、保険営業の仕事に関わって、10年以上も経ってからのことでした。仕事柄、心が揺さぶられる体験談などに接することが多く「保険に入っておけば安心」と考えていたのです。残念ながら、それは幻想だと思います。保険は、あくまで、現役世代が急死するような「発生頻度が低い不測の事態」に備えることに適した「手段」だからです。 逆に、他人事とは思えない、老後の保障などには不向きで、断じて万能ではありません。保険料が高くついて仕方がなくなるからです。 難しい理屈ではないはずです。しかし、心情的には受け入れ難いことかもしれません。だからこそ、気をつけたいのです。お金と不安が絡むと判断を誤りやすいからです。私は、今後も自らの間違いを忘れずに情報発信していきます。(完) (オフィス・バトン「保険相談室」 代表 後田亨)【連載】元保険営業マンが今だから話せる「保険の真実」