鳥取城北 先輩の涙を胸に臨む、2年連続の甲子園 選抜高校野球
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第93回選抜高校野球大会に出場する鳥取城北は、昨年選ばれながらセンバツが中止になった先輩たちへの思いを胸に臨み、甲子園に挑む。 【写真】センバツ出場32校 春の便りに喜ぶ球児たち 「3年生は戦えなかった。去年の分まで頑張る」。センバツ出場校に選出された1月29日。2年連続出場となった鳥取城北の部員たちは日々の思いを記す野球ノートに、そう記した。新型コロナウイルス感染拡大の影響でグラウンドに立てなかった、尊敬する先輩たちの分まで甲子園で暴れ回ろうと誓った。
野球能力が高く、チームを引っ張るリーダー肌が多かった3年生。2019年秋の中国大会で準優勝を果たして昨年、8年ぶりのセンバツ切符を手にした。しかし、直前になって大会が中止に。松田龍太(2年)は「涙を流す先輩もいた。表向きは元気を装っていたけれど、すごく落ち込んでいたと思う」と当時を振り返る。 夏の全国選手権も中止になる中、甲子園交流試合の開催が決定。部員にアンケートを取った結果、2年生でただ一人、畑中未来翔がメンバー入りした。期待に応えて3安打したが、明徳義塾に5―6で逆転サヨナラ負け。悔しい思いが募った。
託されたのは「強さ、優しさ、熱さ」
大会後、主将に選ばれた畑中は吉田貫汰前主将(3年)からバットを譲り受けた。ほかの部員たちも3年生から手袋やTシャツなどを手渡され、「絶対にセンバツに出てくれ」と託された。5番の徳山太一(2年)は、主軸だった河西威飛さん(3年)にバットの出し方を直接指導してもらい、昨秋はチームトップの5割近い打率を記録。太田英之介(2年)は吉田前主将に打席での心構えを説かれ、秋の途中から4番に座り結果を残した。山内龍亜(2年)は中川央さん(3年)から、代々投手陣が行ってきたトイレ掃除を引き継いだ。沖縄出身でホームシックになった際、親身に寄り添ってくれたのが中川さんだったからだ。 例年より10人以上も部員が少なく、控えめな性格という2年生にとって、3年生は羅針盤だった。畑中主将は「恩返しと言えるか分からないが、先輩たちが立てなかった甲子園の舞台で成長した姿を見せたい」と誓う。「強くて、優しくて、熱かった」先輩たちへの思いを胸に、センバツ初勝利を目指す。【田中将隆】