江村美咲のパリオリンピック後の成長 フェンシング全日本選手権を東京五輪金メダリストが分析
特筆すべきは、決勝直後の江村選手のコメントです。彼女は決勝の相手であり、パリ五輪で自身のスパーリングパートナーを務めた小林選手に対して感謝の意を示し、「次は一緒にロサンゼルス五輪に行きたい」と涙ながらに語りました。試合直後に対戦相手へのリスペクトと感謝を表現する姿勢は、アスリートとしてだけでなく、ひとりの人間としての成熟を感じさせます。まさにスポーツマンシップの体現であり、勝敗を越えた感動を与えてくれました。 ●日本フェンシング界のさらなる成長に期待 全日本選手権で注目を集めたのは、オリンピアン、メダリストだけではありません。パリ五輪に出場することが叶わなかった選手たちや、将来オリンピックの舞台を目指す次世代の選手の活躍も目立ちました。女子フルーレで優勝した長瀬凛乃選手は18歳の大学生。決勝では団体銅メダリストの東晟良選手にまったく臆することなく、積極的なプレーで勝利を収めました。 2008年の北京五輪・男子フルーレで、太田雄貴さんが日本人選手初の銀メダルを獲得してからは、「五輪に出てメダルを獲る」ことが"現実的な夢"になり、その頃に競技を始めた当時の子どもたちが今の代表チームの大半を占めるようになりました。 パリ五輪で5つのメダルを獲得したことも、当時の太田さんと同様に、新たなタレントがフェンシングと出会うきっかけとなる役割を果たしているように感じます。競技人口の増加とともに、国内の競技力向上も続くと予想され、日本フェンシング界により明るい未来が訪れるのではないかと期待しています。 【プロフィール】宇山賢(うやま•さとる) 1991年12月10日生まれ、香川県出身。元フェンシング選手。2021年の東京五輪に出場し、男子エペ団体において日本フェンシング史上初の金メダルを獲得。同年10月に現役を引退。2022年4月に株式会社Es.relierを設立。また、筑波大学大学院の人間総合科学学術院人間総合科学研究群 スポーツウエルネス学学位プログラム(博士前期課程)に在学中。スマートフェンシング協会理事。スポーツキャリアサポートコンソーシアム•アスリートキャリアコーディネーター認定者。 公式インスタグラム>>
宇山賢●文・図 text by Uyama Satoru