初代アウディRS3スポーツバックはこのセグメントでは異例の高性能モデルだった【10年ひと昔の新車】
BMW 1シリーズ Mクーペの登場に刺激されて開発?
2010年12月、アウディAGはA3シリーズの高性能バージョンとなる初代RS3スポーツバックを発表した。TT RSの2.5L直5ターボエンジンを搭載することも大きな話題となった。RS3スポーツバックの開発計画には紆余曲折あったようだが、その後、大成功作となる。ここでは発表後まもなく、デトロイトモーターショーの開幕に合わせて、モントリオール郊外のテストコースで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年3月号より) 【写真はこちら】TT RSのタイヤサイズは前後255/35R19だが、RS3スポーツバックはフロントに235、リアは225を組み合わせる。(全4枚)
噂によれば、RS3の企画はお蔵入りしそうになっていたが、BMW M社が1シリーズ Mクーペを発表したことに刺激されて復活したと言われている。その試乗会は、発表から1カ月も経ていない1月初旬、デトロイトモーターショーの開幕と同じタイミングで行われた。 「さすがはアウディ!」とモントリオール郊外のテストコースへ向かうと、そこにはたった1一台の試乗車しか用意されていなかった。しかも試乗時間はランチを挟んでおよそ1時間である。「やはりこの商品企画は泥縄だったのだろうか?」という疑問がレポーターの頭の中をよぎる。 それでも一面の銀世界に登場したRS3の姿は、どこから見ても即席とは思えない完成度の高いスポーツモデルに仕上がっていた。 フラットシルバーで縁取りされたシングルフレームグリルと、その両脇に大きく口を開けたエアインテークはすべてハニカム状のメッシュでカバーされ、スポーティな演出ができあがっている。アルミ調カバーのドアミラーは、RSモデルのアイコンのひとつ。リアエンドは、ディフューザー風のフィニッシャー左側からツインエキゾーストパイプがパワーを象徴するかのように突き出ている。 インテリアは、基本的なデザインこそS3に準ずるが、ステアリングホイールのリムやハンドブレーキグリップ、シフトノブは滑り止めと汗の吸収に優れたバックスキンで覆われ、ハードボイルドな雰囲気に満ちている。 RS3に搭載されるエンジンはTT RSと共通の5気筒2.5TFSIで、1600~5300rpmで最大トルクの450Nmを発生する。組み合わされるトランスミッションは7速Sトロニックである。