「猫つきマンション」って何? “殺処分”猫たちの救世主になれるか
部屋も猫も「借りる」という発想
システムの概要はこうだ。まず、「猫つきマンション」という専用の物件があるわけではない。もともとある物件を「ペット可」のような形で「猫つき」として貸し出すのだ。単身者向けの1Kやワンルーム、2~3LDKのマンションに、最近は 1戸建ての物件もある。 こうした物件は、『東京キャットガーディアン』のHPや賃貸物件のポータルサイトに掲載され、提携不動産屋会社を通じて契約が行われる。入居者は同時に、「一時預かり」の形で猫の“賃貸契約”を『東京キャットガーディアン』と交わす。もちろん、猫を飼うのは義務ではない。 譲渡と一時預かりの違いは、猫の所有権の帰属だ。譲渡の場合は、所有権は里親(飼い主)に移る。この時、それまでにかかった医療費、ワクチン代等の費用(原則3万4000円)は里親が負担する。対して「預かり」の場合は、所有権は『東京キャットガーディアン』に帰属したままとなる。つまり、引っ越しなどでその猫と暮らし続けることができなくなった場合、シェルターに返すことができるのだ。譲渡費用はかからないが、預かっている間の食事代・医療費などの諸費用は飼い主(借り主)が負担する。
条件は「1歳以上の成猫」
そして、「猫つきマンション」で貸し出される猫には、「1歳以上の成猫」という条件がついている。これが、このシステムの肝だと言っていい。 「子猫は里親の希望者が多く、いくらでも譲渡できるんです」。しかし、1歳を過ぎた大人の猫、さらには老猫ともなれば、里親希望者はぐっと減る。そこで、「一時預かり」というシステムに「1歳以上」という条件を乗せ、成猫たちの「生存の道」を増やしたというわけだ。 尚、譲渡、預かりを希望する場合は、ともに面談がある。「『疑わしきは譲渡せず』で、猫と暮らしていただくのは難しいと判断した場合には、こちらからお断りすることが少なからずあります」。“成約率”はおよそ6割程度だ。
入居者の多くはフルタイムで働く女性
山本代表が当初想定していた入居者層は、「猫と初めて暮らす人」「単身者」「転勤族」、そして「高齢者」だ。「今、高齢者のペット問題が非常に顕著になっています」。飼い主が入院したり亡くなった場合、残された猫はどうなるのか。ほとんどの保護団体が高齢者への譲渡を拒否しているのが現状だ。「返すことができる」預かりのシステムならば、この問題は解決する。 だが、蓋を空けてみれば、実際に入居しているのはフルタイムで働く単身の女性や共働きの夫婦が大半だという。「猫は犬と違ってお留守番を意に介さない動物。そこに目が向いたのだと思います。その中には、社会貢献になるからと、あえてこのシステムを利用してくださっている方もいます」。また、消極的な「ペット可」よりも、積極的な「ウエルカム」だという安心感に価値を見出す人も多い。