なぜ浦和レッズは全北現代との”死闘”を制してACL決勝進出を決めることができたのか?
ゴール横でひざまずきながら勝利の瞬間を見届けた西川は、満面の笑みを浮かべながら江坂と抱き合い、駆け寄ってきた仲間たちの歓喜の輪に飲み込まれた。西川もまた、PK戦で連発した鬼気迫るセーブをゴール裏へ捧げている。 「表情を見ると、相手の方にプレッシャーがかかっていたんじゃないかと思います。向こうが決めなければいけないのがPK戦なので、いかにメンタル的に落ち着いてできるかがカギでした。僕としては一本止めれば必ず勝てると信じていた部分がありましたし、あとは僕の後ろで浦和のファン・サポーターの方々が相手へ大きなプレッシャーをかけてくれていたので、一緒に止められたのかなと思っています」 東地区の代表が決まった今シーズンのACLだが、西地区はグループステージを終えた段階だ。ノックアウトステージが行われ、代表が決まるのは来年2月。浦和が5大会ぶり3度目の優勝をかけて臨むホーム&アウェイ方式の決勝戦も、敵地で行われる第1戦が2月19日、浦和のホームでの第2戦が同26日となっている。 Jリーグは新シーズンとなっているため、今夏のノックアウトステージを戦ったメンバーも一部が入れ替わる可能性がある。それでも、東南アジアのタイで集中開催されたグループFを大邱(韓国)に次ぐ2位で突破し、さらにノックアウトステージを勝ち残った軌跡は未来につながると、キャプテンの立場から西川は前を見すえた。 「このACLにかける思いが若い選手からも感じることができましたし、後ろから見ていて練習からも緊張感が伝わってきた。こういう戦いを経験して成長していかなければいけないし、Jリーグを代表して出るという誇りを持ちながら決勝戦も戦いたい」 一時は下位に低迷しながら最新の順位では8位にまで上昇しているJ1リーグ戦に、そしてベスト4に進出しているYBCルヴァンカップに照準を定める。今シーズンの残された戦いへ、西川はこんな言葉をつけ加えることも忘れなかった。 「早くJリーグでも声出しがOKになるように、僕たちも楽しみにしています」 決勝進出を決めた浦和は、少なくとも271万ドル(約3億7000万円)の賞金を確定させた。もっとも、歓喜のなかで浦和が手にした最大の収穫はファン・サポーターと一枚岩になった光景が選手たちを鼓舞し、対戦相手を畏怖させる特別な力だった。 (文責・藤江直人/スポーツライター)