「ジャンプ」「マガジン」少年漫画誌の次なるトレンドは「ラブコメ」に? 各誌が注力する理由
■『マガジン』『チャンピオン』『ジャンプ』……各誌で強い存在感を放つ「ラブコメ」 令和の漫画界はラブコメ漫画が牽引している――そう言ってもいいほど、漫画雑誌、そしてアニメでもラブコメ・恋愛漫画が盛り上がりを見せている。現在「週刊少年ジャンプ」で連載される青春恋愛漫画『アオのハコ』のアニメが、10月3日からスタートした。「ジャンプ」といえば9月30日発売の「週刊少年ジャンプ」44号で6年半にわたる連載が完結を迎えた『呪術廻戦』の連載終了が記憶に新しいが、バトル系漫画ではなく、次は恋愛漫画が屋台骨を支えられる存在になるのか、注目が集まっている。 【画像】「週刊少年チャンピオン44号」付録『学園アイドルマスター』藤田ことね役の声優・飯田ヒカルの両面ポスター 少年漫画のラブコメ・恋愛漫画といえば、1980年代の「週刊少年サンデー」などが牽引していたが、「週刊少年マガジン」「週刊少年ジャンプ」など他誌を含め、あくまでも 1~2本程度掲載されているに過ぎなかった。ヒット作はもちろんあったものの、少年誌の中心はあくまでもバトル漫画やスポーツ漫画だったといえる。 ところが、『彼女、お借りします』がヒットしている現在の「マガジン」を見てみるとわかるように、連載陣のなかにラブコメ漫画が占める割合が増大している。同誌は 1990年代に『湘南純愛組!』や『特攻の拓』などのヤンキー漫画が数多く掲載されていたことを考えると、時代の変化が著しいと感じる。 『週刊少年チャンピオン44号』では『学園アイドルマスター GOLD RUSH』の新連載がスタートした。コミカライズの脚本・構成(ネーム)は『ランウェイで笑って』の猪ノ谷言葉が担当。 また、10月3日発売の「週刊少年チャンピオン」からは、アイドル育成ゲーム『学園アイドルマスター』のコミカライズ『学園アイドルマスター GOLD RUSH』が連載開始する。各誌が「マガジン」のラブコメ漫画を追随する動きを見せていると言っていいようだ。 ■メディアミックスにより増えるラブコメ、減るギャグ漫画 ラブコメ漫画が少年漫画雑誌の中心になってきた要因は、どこにあるのだろうか。また、 次々にアニメ化もなされ、深夜アニメではいわゆる異世界転生ものと並んでメインコンテ ンツになりつつあるのは、なぜだろうか。その大きな要因は、昨今盛んになっているメ ディアミックス抜きには語れない。 メディアミックスとラブコメ漫画は、とても相性がいい。バトル漫画やスポーツ漫画、 特にスポコンものなどの場合、主人公が成長するまで長い連載期間を要する。キャラク ターが確立されるまでも時間がかかる。ラブコメ漫画なら、男性主人公は存在するものの、 あくまでもメインはヒロインだ。しかも最近のラブコメ漫画は、ヒロインが複数人いるこ とも多い。 かわいいヒロインが複数人いれば、それだけグッズも出しやすい。ファンの間でも、 キャラA、キャラB、キャラCを推す人がそれぞれ出てくるから、とにかくグッズが売り やすい。アクリルスタンド、ぬいぐるみ、クリアファイル、シール とにかくラブコメ...... 漫画はグッズ展開がしやすいのだ。これが、各社がラブコメを重要視する要因であるよう に思われる。 一方で、メディアミックス全盛のなか、勢いがないのがギャグ漫画だ。少年誌のギャグ 漫画、とくに下ネタが多く登場するような漫画、シュール系の漫画などはかなり数が減っ ている。ギャグ漫画はグッズ展開が難しいという事情が影響していると思われる。そのた め、ラブコメ漫画にギャグの要素を加えたハイブリッドな作品も登場しており、今後の 漫画界の動向から目が離せなくなっている。
元城健