にじさんじで一番グローバルなひと オリバー・エバンスが“断絶の世”でもたらした功績
英語力・知識・交友関係 裏に潜む好奇心が彼を突き動かす
オリバー・エバンスというと、多くのにじさんじファンが思い出すのは彼の高い英語力であろう。 ENを除いた他のにじさんじメンバーで英語が堪能なライバーというと、星川サラ、矢車りね、夢追翔など、指折り数える程度。英語で会話するどころか、ゲーム中に英文が出てきてもしっかりと訳して理解できるタレントのほうが少ないという、“英語力ゼロ”な面々がにじさんじの大半を占めていた。 彼が初めて英語でのトークがメインとなる配信をしたのは、デビュー後1ヶ月ほど経った2021年8月27日のこと。オリバーにくわえ、当時まだにじさんじに統合される前のNIJISANJI IDとNIJISANJI KR、中国で展開しているVirtuaReal、そして当時スタートを切ったばかりのNIJISANJI ENのメンバーとともにパーティゲーム『PICO PARK』を使ってコラボ配信をした。 そのため、オリバーが海外タレントらと何不自由なく英語でコミュニケーションを取る姿を見たリスナーたちは、別人を見ているかのような印象を受けただろう。それほどギャップを感じさせる場面であり、それだけで彼はにじさんじの中でも特殊・特別な存在となったのだ。 その後も、オリバーはNIJISANJI ENの面々と何度も関わっていくことになる。ENメンバーではかなり日本語力の高いPetra Gurinとは『IT TAKES TWO』のコラボ配信をするなど親交が深く、にじさんじとNIJISANJI ENのメンバーが交わる場では日英どちらの言語も喋れるパイプ役として出演することも多い。 ENメンバーの配信に突然登場したり、NIJISANJI ENから新たなメンバーがデビューする際にはPetraやYamino Shuらを呼び、自身が配信枠を取って同時視聴をするほどだ。 こういったこともあり、オリバー・エバンスの3Dお披露目配信には、実に14人もの海外メンバーからメッセージが届き、にじさんじライバーとしては類を見ないほど多国籍・グローバル配信となった。 こうした経緯もあり、ENメンバーからは「オリバーはNIJISANJI ENのメンバーだよ!」「日本語が上手なENメンバーだよ」と冗談めかして語られることがとても多い。 もちろん彼は日本人として日本・にじさんじに所属しているわけだが、NIJISANJI ENのデビュー時期を振り返ってみると、1期生Elira PendoraとFinana Ryuguが21年5月に、2期生Rosemi LovelockとPetra Gurinが同年7月、3期生とEnna AlouetteとReimu EndouとMillie Parfaitが同年10月、12月には男性タレントとしてIke Eveland、Vox Akuma、Luca Kaneshiro、Shu Yaminoの4人がデビューしており、じつはオリバーとNIJISANJI EN初期の面々はおなじ2021年にデビューした者同士という縁があるのだ。 コロナ禍という大変な時期に、新たなカルチャーを担うべくチャレンジ心の強い面々が集まった、NIJISANJI ENには独特の“ファミリー感”がある。そんななか、日本に自分たちとほぼ同時期にデビューし、しかも英語が堪能で積極的に交流をしてくれるライバーが日本のにじさんじメンバーにいると聞いた彼ら/彼女らは、それをどう受け止めただろうか。 少なくとも、彼らが語る「オリバーはENメンバーだよ」という言葉には、日本語・英語といった言語圏の壁をこえ、エンパシーに近しい感情が込められているのがわかるだろう。 こうして海外と日本のメンバーをつなぐ橋渡し役という重要なポジションを確保したオリバー。現在彼はメディアミックス作品『Lie:verse Liars』に声優として、にじさんじ公式クイズ番組『にじクイ』に解説役としてそれぞれ出演するなど、にじさんじ発のオリジナルコンテンツに度々登場している。 『にじクイ』のなかで解答者となった際には、持ち前の博識ぶりを披露することが多いのだが、彼の興味は一般常識や学力にとどまらずエンタメ~サブカルシーンにも広がっており、その豊富な知識と高い感度を配信でみせてくれている。。 ディズニー映画、ミュージカル、小説、TRPGにくわえ、アニメやマンガ作品にも好みの作品がいくつもあることをこれまで明かしている。その影響からかゲーム配信する際には、『バイオハザード7』『Hogwarts Legacy』『ELDEN RING』『Coffee Talk』「ポケットモンスター」シリーズといった、ストーリーに重きをおいた作品をプレイをすることが比較的多い。 プレイ中にはパッと見では分かりづらいバックグラウンドや設定についても考察することが多く、登場キャラにも感情移入しやすいタイプなようだ。 緊迫した場面では少しばかり口が悪くなり、ホラーゲーム配信の際にはよりそれが顕著になる。もともとオリバーは武道を中心にスポーツをしていたそうで、その頃の体育会系な一面が出ているらしく、普段の温厚そうなオリバーとは違う、いろいろな顔をみつけることができる。 また、その声の良さもあって、雑談配信も好評。自身の好きなものや最近起こった出来事だけではなく、リスナーからのコメントに反応して自身の考えを詳らかに話すこともあるなど、その姿勢・スタンスは品行方正なイメージ通りそのままといったところだ。 その逆に、そういったキチっとした礼儀正しさに反して“はっちゃける”ことも多い。お酒好きということもあり、飲みながら配信をすることもある。その際には、普段よりも輪をかけて陽気になり、ユーモアで場を沸かせるオリバー・エバンスを見ることができる。 そのビジュアルや声にピッタリ柔和で温厚なスタンス、合間合間から顔をのぞかせるユーモアや挟まれるジョークなど、さまざまな表情でみる者を魅了するオリバー・エバンス。 この原稿の最初に書かせてもらったが、にじさんじ運営が主導する番組・コラボ含めた様々なイベントが開催され、大きく盛り上がるにじさんじのなかで、オリバーは自身の個性を生かして唯一無二のポジションを築いていった。 だが、デビューから3年となるいま現在においても「まだ見せていない魅力」がありそうで、この数年の間で磨かれた部分だけでも多くの視聴者を虜にしているようにみえる。オリバー・エバンスのなかに潜んでいる好奇心とともに、どのような魅力とエンターテイメントが飛び出すのか、引き続き楽しみである。
リアルサウンド編集部