「がんの進行を早める可能性も」話題の《老化抑制サプリ「NMN」》、医師が絶対に飲まないと断言する理由
古今東西、あらゆる人たちが夢見てきた「不老不死」。いま、そんな夢を叶えるような宣伝文句で存在感を増している「エイジングケアサプリメント」がある。「NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)」だ。 【図解】3分で終わる歯みがき完全マニュアル 前編記事『ここ数年で市場過熱、人類の夢《不老サプリNMN》が大人気…東大教授が「老化抑制のメカニズム」を解説』では、NMNとは何か、老化を抑制するメカニズムについて検証した。 NMNのメカニズムを知ると、たしかに老化を食い止める効果がありそうに思えてくる。抗老化効果がある物質と知れば、サプリに手を出したくもなる。
NMNはあくまで「食品」
NMNには'20年頃から注目が集まり始め、厚生労働省は同年3月に食薬区分の改正をおこない、NMNを「非医薬品」として分類した。国が制度上の位置付けを与えたことで、事業者の参入障壁が低くなり、多くのメーカーがNMNサプリを売り出した。 しかし、富山大学医学部教授の中川崇氏がこう警鐘を鳴らす。 「NMNは非医薬品という位置付けをされていますが、それはつまり『食品』と同じ扱いなのです。医薬品は効果や効能が保証されていますが、非医薬品であるサプリはそうではない。タマネギを食べると血液をサラサラにする効果があるなどという言い方がされますが、そうした言説にはほとんど科学的なエビデンスはないと言っていいでしょう。 サプリ全般に言えることでもありますが、メーカーがNMNサプリをあたかも効果や効能があるかのようなイメージで販売していることは消費者に誤解を生むことになりかねません」
どんな副作用が出るかわからない
いまのところNMNに関する研究はすべて動物実験の結果だ。 人間への臨床試験によるエビデンスはまだ不十分で、病気の患者に対して実施された臨床試験は一つもない。医薬品のように、長期間・大多数の臨床試験を経たわけでもなく、どんな副作用が出てくるのかもわからない。 実際、『「ニセ医学」に騙されないために』(内外出版社)などの著書がある内科医の名取宏氏は「私は飲みません」と断言する。 「どれほどの量を、どれくらいの期間飲めば効果があるのか、研究者もまだ手探りの状態です。NMNは、細胞を活性化させる働きがあるので、がん細胞がある人は、がんの進行を早めてしまうかもしれません。がん患者のかたは摂取を控えたほうがいいでしょう。 さらに、化学的にNMNを生成しているサプリの場合は、どうしても不純物が混ざっている可能性があります。そうした“リスク”がどのように出てくるのかを判断するための、長期間での観察結果もまだ出ていません。一般のかたであれば、サプリに頼る前に、体重をコントロールしたり、適度に運動したり、お酒を控えるなど、健康そのもののためにやるべきことがあるはずです」