デジタル時代のジャーナリストは「タコ足キャリア」で生き残る
では、「ネットで食えない」という流れは変わらないのでしょうか。亀松さんはその構造変化が戻らないものであることを指摘しました。 「今までは選ばれた人だけが発信することができました。でもネットの時代は逆で、これまで情報の受け手だった側も発信できるんです。彼らが発信する情報の中には、くだらないこともすばらしいこともあります。発信者が限られていた時代には、その人たちが十分なお金を得ることができましたが、ネットでは、新たな発信者も含めて、幅広い人たちにお金がまわっていくのです。この流れは変わらないので、その構造の中で、どう目を向けてもらうのかが重要になるでしょう」
兼業ジャーナリストの時代が来る
亀松さんが語ったような「誰もが情報発信者」の時代にどうやって新たな書き手が生まれてくるのでしょうか。藤代さんは、「僕は兼業ジャーナリストの時代がくるとずっと言ってきました。兼業がおすすめです。構造変化は避けられません。会社の中にいて、スキルを生かしながらポジションをとるのがいいでしょう。例えば、シンクタンクにいて記事を書けば、自分の評価につながります」と話しました。 藤井さんもノンフィクションの歴史を振り返りながら、「兼業」のスタイルについて、語りました。 「かつて、1960年代や70年代には、現場の人が現場で書けば良いという時代がありました。たとえば、季節工をやりながら書くということです。ルポは記録文学ですので、当時から兼業という発想があったんです。でも、専業で食える人が出てきて、その時代は終わりました。そして、今はかつてとは異なる形で兼業の時代になりました」 藤井さんはさらに、自身のことを引き合いにだして説明しました。 「僕自身もテレビのコメンテーターや大学の非常勤講師をやっています。ノンフィクションだけで食っている人は少ないでしょう。兼業で色々なことをやるために、どこにタコ足の足を置くのかを考えて、絶望しないで楽しめるようにするのがいいでしょう。そして、兼業していることの1つ1つが有機的につながる形がいいですね」 藤代さんも、これに応じて、「工夫してタコ足をつくりましょう」と語りました。 ジャーナリストキャンプの作品は、何日もみっちり取材をしたうえで書かれたものばかりですが、教育プログラムだからこそできる側面もあります。キャンプの作品の感想として、配信先のニュースサイトのコメント欄でも、読者から、じっくり取材していることを評価する声がありました。ただ、ネットメディアでは、お手軽記事が受ける状況にあるがゆえに、今後、しっかりと取材をするライターが活躍するためには、これまで以上の工夫が求められるでしょう。 (編集:新志有裕、撮影:赤倉優蔵) 第2部のレポート「読んでもらえない地域情報、『東京目線』で魔窟を掘り起こせ」(http://thepage.jp/detail/20150811-00000008-wordleaf)