デジタル時代のジャーナリストは「タコ足キャリア」で生き残る
奥村さんは、全体的な講評として、「もっと写真に力を入れた方がよかったでしょう。ネットは動画も入れることができて、自由なメディアです」と語りました。その後のディスカッションでは、奥村さんのこの指摘に対して、藤井さんが、「マネタイズも含めて、僕は古いメディアでやってきました。動画を記事の中に入れるとか、そういうものについていけません。自分は絶望しています」とこぼす一幕がありました。それはなぜなのか。藤井さんは次のように語りました。
「僕は文字だけでやってきた人間です。動画にも写真にも頼りません。写真で見せるようなことも、テキストで伝わるように表現してきました。ですから、カメラをまわすだけなら文章がおろそかになるのではないか、どっちつかずになるのではないか、という恐怖感があるのです」 これに対して、亀松さんは「写真は必要ですけれど、一眼レフのカメラは必要ありません。iPhoneで撮ってみればいいのです。スマートフォンの性能が良くなって来て、素人でも良い写真が撮れるようになってきました」と返しました。 藤代さんは、「新聞や雑誌も、(デスクは現場に対して)写真を出せ、動画を出せと現場に言っているようですが、取材現場はどれもこれもやれと言われて、中途半端になってしまっているのではないでしょうか」と道半ばであることを指摘していました。
「ネットの媒体はお金が安くて、ため息が出る」
ただ、奥村さんは写真や動画の重要性を強調する一方で、肝心のライターが不足していることを語りました。 「THE PAGEを始めて3年目になりますが、ちゃんと取材して書けるライターがいないんです。取材をせずに、ネットで調べて書く人はいます。そういう記事にニーズがあるからでしょう。でも、スキルを積んだプロの書き手がいないんです」 藤井さんはこう返しました。 「ライターはたくさんいます。でも、ネットでは食えないからではないでしょうか。ネットの媒体はお金が本当に安くて、ため息が出てしまうんです。紙媒体は、ネットよりはいいので、ライターがネット媒体に行きにくいのではないでしょうか」