内田有紀が目撃した米倉涼子の涙「照れ隠しなのかもしれないけど“そうだっけ?”ってとぼけていて(笑)」
「確実に自分を俳優として成長させてくれた作品」
――おふざけシーンのほうが、より皆さんの息があわないと面白くならないこともありますよね。 「そうですね。それに、ああいうシーンが多いと、私たちの仲もさらに深まっていくんです。みんなで麻雀をしたり、お酒を飲んで愚痴を言ったり。そういうことができる場であった『神原名医紹介所』(未知子や博美などが所属する医師紹介所)は、私たちの絆を一番深くしてくれた場所でもあります」 ――12年前に始まった本シリーズですが、内田さんにとってこの「ドクターX」はどんな作品になっていますか。 「確実に自分を俳優として成長させてくれた作品でした。俳優にとって大切な30代半ばから40代後半までの時期を、この作品とともに歩めたことにとても感謝しています。 現場での思いやりや人に対する感謝の気持ち、穏やかさや安らぎ、緊張感も含めて、全てを感じさせていただけた作品であり、人としても成長させていただけたと思っています」 ――そういうご縁は自分から望んでもなかなか出会えないものだと思うので、本当にいい出会いだったのですね。 「そうですよね。それに、こちらがやりたいと思っても勝手に続けられるものではないですし“また見たい”と皆様に仰ってもらえたからこそできることなので、その分、こちらが提供できることは全力でしなければいけないと思ってやってきました。その重圧というものは、米ちゃんはじめ、キャスト・スタッフみんなが感じていたと思います」
米倉涼子にかけた言葉
――2012年に「ドクターX」がドラマとしてスタートした時、こんなに長く続く作品になることを想像されていましたか。 「12年も続くなんて当時は想像していませんでした。たしかシーズン1の打ち上げの時に、米ちゃん(米倉涼子)が泣いたんですよ。本人は忘れているんですけど、こんなに評価をいただけた作品ができたことに感動して、とても感謝していて。 何年か後に“あのとき泣いたよね”って言ったら、照れ隠しなのかもしれないけど“そうだっけ?”ととぼけていて(笑)。でも、そういう彼女の熱意がスタッフの皆さんの気持ちを動かして、それが作品となって視聴者の方にも何かが届いていて、ここまで続けてこられたのだと思います」 ――博美としては、シリーズの常連になりそうな予感はどこかで感じていましたか? 「先ほどもお話ししたように、私も含めたキャストやスタッフの多くがこんなに長く続く作品になるとは思っていませんでした。ただ、シーズン2の終わりごろに続きそうな気配は何となくあったんです。シーズン1が終わった時に、博美が“次はフリーランスになります”というようなセリフがあったんです。そのセリフもあって“もしかしたらこの先も続くのかな”という予兆はどこかありました。その次のシーズンから博美も見事にフリーランスになっていたので、嬉しかったです(笑)」 内田さんが予期した通り、国民的作品となった『ドクターX』。キャストそれぞれにとって、非常に思い入れのある作品であることは間違いないだろう。 取材・文/根津香菜子 ヘアメイク/板倉タクマ、スタイリング/藤井享子 うちだ・ゆき 1975年11月16日、東京都生まれ。92年にドラマ『その時、ハートは盗まれた』で俳優デビュー。近年の主な出演作に、フジテレビ『最後から二番目の恋』、NHK連続テレビ小説『まんぷく』、WOWOW『連続ドラマW 華麗なる一族』、NHK『燕は戻ってこない』などがある。待機作に、25年1月10日公開の『劇映画 孤独のグルメ』に出演。 根津香菜子
根津香菜子