「最後に笑うのは、レアル・マドリーだ」――魔法の1週間で証明した歴史が作る“安定した劇的勝利”
レアル・マドリーの勝負強さ
9日にはチャンピオンズリーグでPK戦の末に準決勝進出を決め、21日にはラ・リーガでバルセロナとのクラシコに逆転勝利を収めたレアル・マドリー。現在のマドリーが見せる「異次元の勝負強さ」を、現地在住記者が綴る。 【動画】異次元の勝負強さ!マドリーの劇的決勝弾 取材・文=江間慎一郎
「マドリーはこう勝つ」
現在の日時は2024年4月20日、23時を少し過ぎたあたりだ。ここサンティアゴ・ベルナベウのピッチでは、レアル・マドリーの選手たちがスタジアムの応援の音頭を取るグラーダ・ファンス(ファンたちのスタンド)の人々と勝利の喜びを分かち合っている。 彼らはバルセロナを劇的逆転勝利で下して、2年ぶりのラ・リーガ優勝をほぼ手中に収めたばかり。スタジアム全体には、このクラブの代表的なチャントが響き渡った。 「アシ! アシ! アシ・ガナ・エル・マドリー(マドリーはこう勝つ!)」 「コモ・ノ・テ・ボイ・ア・ケレール(どうして愛さずにいられようか)? シ・フイステ・カンペオン・ウナ・イ・オトラ・ベス(何度となく欧州王者になったのならば)」 しかし、改めて考えてみても何て厳しいのだろう。世界の最たる常勝クラブであるマドリーのチャントは、勝つことを大前提としている。彼らを愛する理由のハードルは高い。リヴァプールの「人生一人ではない」や、ベティス の「たとえ負けようとも」といったものとはベクトルが逆方向だ。 それでも、マドリーはまた愛されるのだ。また勝って、その要求に応えたのだ。 マドリーとそのサポーターにとっては魔法の1週間だった。彼らはこのクラシコの4日前には、チャンピオンズリーグ準決勝進出をかけてマンチェスター・シティと死闘を繰り広げ、PK戦の末に勝利を果たしている。そのどちらのビッグマッチも、マドリーはなぜ自分たちがマドリーなのかを証明していた。すなわち、彼らは最後には勝っているのである。
最後に、笑う
マドリーはカメレオンのように各試合の各状況に適応して、最後には笑っている。シティとの2ndレグの体色変化は激しかった。12分にロドリゴのゴールで2戦合計スコアを4-3とした彼らは、それからの108分間、耐えて、耐えて、一度失点して、しかしPK戦まで4-4のまま耐え続けている(被シュート数は33本)。その時間の大半は得意とする速攻を仕掛ける糸口すら見つけられなかったが、しかしシティのポジショナルプレーがどれだけフィジカルとメンタルを消耗させて守備の判断ミスを促そうとも、マドリーは驚異的な集中力と組織力、団結心を維持して本当にわずかなスペース・隙間しか許さなかった。PK戦に突入すると、まるで感覚が麻痺しているかのように、マドリーが勝つとしか思えなかった。 その麻痺したような感覚はクラシコでも続き、実際マドリーは勝った。ラミン・ヤマルの突破とセットプレーを武器にしたバルセロナはキックオフから6分後にアンドレアス・クリステンセン、69分にフェルミン・ロペスと2度リードを奪ったものの、やはりカルロ・アンチェロッティのチームはどんな状況、逆境にも適応する。色を変える。シティとの激戦直後で疲弊しているのは間違いなかったが、ダニ・カルバハルに代わり出場したルーカス・バスケスがジョアン・カンセロの守備の無責任さを突いて、1-1とするPK獲得、2-2とするゴール、さらにはジュード・ベリンガムの91分弾をアシスト。後半は勝たなければ道がないバルセロナの焦りが見え、マドリーとバスケスは終了間際の10分間、その焦りにうまく乗じた。バルセロナとの勝ち点8差を維持できる2-2でも良い結果だったが、「バモス行こうぜ)・レアル(! アスタ・フィナル(最後まで)!」の「ル」で韻を踏むチャントが叫ばれるベルナベウの雰囲気も相まって、マドリーが勝つとしか思えなかった。