自閉症の男性は悲痛な行動に出た 福祉法人で障害者虐待、役員が「股間をつかめ」 市役所はネグレクト告発を受け付けず
委員会が聴取しなかった元非常勤職員は、加害職員の言動について「荒々しい扱いで驚いた」との証言を残している。 東村山市は取材に対し「市の判断が受け入れられなかったことは残念」、弁護士は「取材には答えられない」としている。 ▽2階から飛び降りて入院 虐待を受けた利用者たちは何ともなかったのか。小平市の隣、東久留米市からときわ会の作業所に通っていた中込悠平さん(36)=仮名=の両親と妹が取材に応じてくれた。 両親によると、悠平さんには自閉症と重い知的障害があり、意思疎通は難しい。18歳の時から作業所に通っていたが、7~8年前から変化が表れた。 以前は言わなかった、こんな言葉を発するようになったという。「いいかげんにしろ」「ごっつんこ」 さらに、物を投げたり父親の股間をつかんだりするといった行動障害や、自傷行為も出てくるようになった。 「兄はそんなことをする人ではなかった。作業所で何か起きているのではないか」
心配した妹が2020年、地元の東久留米市に相談したが、行動障害はさらに悪化。2021年には2階の窓から飛び降り、骨折して入院した。 家族は原因が分からなかったが、今年5月ごろ関係者から驚くべき話を聞いた。 「作業所で職員から暴行や暴言を受けている」 7月に通所をやめ、9月上旬に法人の役員らを問い詰めると、理事本人が悠平さんら利用者の股間をつかんだり暴言を吐いたりしていたことを認めた。ほかの理事は暴言を知りながら、放置していた。 法人は、暴行していた理事を解任したが、家族との話し合いの後の9月下旬になってからだった。 自閉症の人は自分がされたことをしたり、ストレスから行動障害が出たりすることが多い。父親は「そういうことだったのかと、ようやく分かった」。妹は「兄は『けがをしたら作業所に行かなくて済む』と思って、自傷行為をしていたのかもしれない」と漏らした。 父親の言葉には悔しさと悲しさ、怒りがにじむ。「息子の苦しさに気付いてやれなくて申し訳なかった。法人は虐待を分かっていたのに放置していたことを謝ってほしい。こんなことが他の人に二度と起きないよう、行政はちゃんと対応してもらいたい」 社会福祉法人ときわ会は、一連の問題が報道された後の10月20日、悠平さんと家族に謝罪する意向を表明した。