底辺漫画家がアシスタント時代に気がついた“業界に残り続ける人”の共通点とは 「漫画がずっと好きな人はあんまり残れない」
底辺漫画家 超ヤバ実話 #2
高校卒業後、ひとまず渋谷のデザイン事務所に就職した漫画家の近藤令さん。数カ月で退職し、たまたま見つけた求人で漫画家アシスタントに転身! 【画像】パチンコに関する作品を多く執筆する谷村ひとし氏 師匠・谷村ひとし氏との出会いを『底辺漫画家 超ヤバ実話』(青志社)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
たまたま見つけた漫画アシスタントの求人
「まっとうな人生を歩もう」って言っても、これといって特技もないし資格もないし。いまさら企業に就職するのも嫌だなって思っているときに、たまたま「漫画大好き少年少女集まれ! 年齢、経験関係なし、社員制、月給8万円から。漫画家・谷村ひとし」という広告を見つけました。今でもそんな広告はあるんですかね? それを見たとき「ぼくは、絵が得意だったよな。描いていると夢中になった」って思い出して、これしかないだろうって。 でも正直に告白すると、その求人を読んだときの感想は、「谷村ひとし?誰だろう……」っていう。 だから、とりあえず、面接当日に近くの本屋で谷村先生の漫画を探しました。でもね、どういうワケかなかったんですよ……。 どうしよう、まあいつも読んでますって嘘をつけばいいか、落ちたら落ちたでまたバイト探そうっという軽い気持ちで面接に行きました。 当時先生は学園モノのバイオレンスコメディ『ハイスクールエージェント』や『横須賀OP』などを連載されていました。まぁ、どちらかと言えば、知る人ぞ知る漫画家っていう感じです。 面接時の持ち物に履歴書と「作品」っていう記載があったんで、さてどうしようかと。得意のデッサン力を活かせるものにしようと、どういうワケだが、自分が卒業した小学校の校舎を鉛筆でデッサンしてね。意表を突いてやろうっていう作戦でした。 南口を降りて小金井方面に坂をくだった先あたりが谷村プロダクションの場所でした。 面接の日は、久しぶりに緊張して。まぁ、先生の作品こそ読んではいませんが……描いた作品を持って、満を持して、その先生の自宅兼仕事場に面接に行きました。 インターホンを押したら、「はーい」っていう声といっしょに、ドアが開いたら、本当になんて形容していいかわからないような人が出てきたんですよ。あ、なんて形容していいかわからないような人っていうのは、日本語として実に曖昧だな。文章は難しい。漫画家になってよかった(笑)。