女性よりも男性を出世させがちな「石器時代の脳」 男性偏重の背後にある進化のミスマッチの問題
だが、政治指導者となると、現代社会は男性的な強さの誇示に報いることが多い。 進化のミスマッチのせいで、そのようなシグナルは今やまったく意味がない。なにしろ、たいていの人が覚えているように、アンゲラ・メルケルとジャシンダ・アーダーンは、現代屈指の有能な政治家だったのだから。この2人がベンチプレスでどれだけ持ち上げられるかなど、誰であれ、気にするべきだろうか? 進化心理学の説はみな論争の的になるので無理もないが、リーダーシップにおける性差別が石器時代の脳と結びついていることを、仮にあなたが疑っているにしても、文化的な女性差別の範囲の外にまで及ぶ、さまざまな研究結果を無視するのは、さらに難しい。
■男性らしい顔に対する偏向した気持ち 現代のコンピューター画像処理技術のおかげで、研究者はきわめて正確に顔の画像を操作できる。1回クリックするだけで、顔の典型的な男性らしさを強めたり弱めたりすることが可能だ。 そこで、こう考えた研究者たちがいた。ある人の写真を撮り、そこから受ける男性らしさの度合いをわずかに高めたら、その顔に対する私たちの気持ちはどう変化するだろう? 男性らしさと、それに対する気持ちとの関係は、あなたが思っているほど単純ではない。リーダーシップについての実験では、女性の顔よりも男性の顔のほうが頻繁に選ばれる。これは、あなたの予想どおりだろう。
だが、リーダーシップにまつわる選択の実験の参加者が、紛争のリスクや継続中の戦争といった、安全保障上の脅威に対抗する指導者を選ぶように言われたときには、興味深いことが起こる。これらの実験では、男性らしさの効果が増大するのだ。 実験からは、私たちは危機に際して、より男性らしく見える指導者を無意識に好む可能性が高まることがわかる。不合理ではあるが、その効果が本物であることをデータが示している。 ■「サバンナ仮説」による説明