主な政党の原発に関する公約

　15日公示の衆院選は原発政策も焦点だ。自民党は公約で原発の「供給拡大」にかじを切る。立憲民主党も党綱領で定めた原発ゼロに触れず、当面維持に傾斜する。運転開始から40年を超えた九州電力川内原発1号機（鹿児島県薩摩川内市）など高経年化した原発も増える中、国民民主党はリプレース（建て替え）や新増設を明記。与野党で「原発回帰」がじわりと広がる。 　自民は公約で、2021年の衆院選まで続けた「原発依存度を可能な限り低減させる」との記述を削除。岸田文雄前首相が掲げた「最大限活用」の方針を踏襲する。リプレースや新増設には触れていないが、「エネルギー基本計画の改定に際し、再エネや原子力など脱炭素エネルギーの供給を拡大する」と踏み込み、布石を打ったとの見方もある。 　背中を押したのは、党内に広がる「原発への風当たりは弱まりつつある」（閣僚経験者）との認識だ。円安やウクライナ危機によるエネルギー価格高騰で、電気代は高止まり。電力を大量に使う半導体工場やデータセンターの拡大も見込まれる。石破茂首相は党総裁選の出馬記者会見では「原発ゼロ」に言及したが、その後は「安全を大前提に利活用する」と軌道修正した。 　自民と連立を組む公明党は「将来的に原発に依存しない社会を目指す」との立場を堅持する。それでも、自民の小野寺五典政調会長は公約発表の記者会見で、原発推進の記述は「より党内で大きな声として出ている表れ」と語った。 　立民も原発を当面維持する姿勢を強める。党綱領で掲げる「原発ゼロ社会の一日も早い実現」は、22年の参院選に続き、記載を見送り。新増設や地元合意がない再稼働は認めないとしつつも、「2050年までのできる限り早い時期に依存しない」との書きぶりにとどめた。 　支持団体の連合内は原発の賛否で割れ、経済界は「原発ゼロ」への忌避感は強い。立民関係者は「政権交代を見据え、推進派と反対派どちらにも配慮した結果だ」と解説する。 　連合の電力総連などから支援を受ける国民は推進を前面に押し出す。リプレースや新増設を明記し、「輸入に頼らない安価で安定的なエネルギーを確保する」と主張。日本維新の会も「次世代原発の活用推進」などを盛り込んだ。 　一方、共産党や社民党は「原発ゼロ」を維持し、れいわ新選組は「即時禁止」を訴える。 　エネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画は年度内の改定に向けて政府内で議論が進む。現計画の「可能な限り原発依存度を低減する」との表現や新増設などの扱いが焦点で、選挙結果が改定の行方を左右する。　（黒石規之、金子晋輔、小川勝也）