TKOでV12も山中慎介の“神の左”に不安? 具志堅記録に並ぶ次戦は試練か
陣営は、統一戦の実現交渉を続けているが、WBA王者のジェームス・マクドネル、IBF王者のリー・ハスキンスは、共にボクシング景気がいい英国の王者で国外に出ようとしない。ハスキンスは大森将平(ウォズ)の挑戦を日本で受ける予定だったが、相手が山中となるとファイトマネーを釣り上げて態度を硬化するという。 WBO王者のマーロン・タパレスも、結局、先に大森の挑戦を受けた。 「サウスポーだと言うだけで敬遠されるし、山中の名前は、海外の方が通っている。交渉すると、“いつ上の階級に上げるんだ?”と聞かれる」と、本田会長も苦笑い。山中が、V13、V14を成功させた後、Sバンタムに階級を上げて王座が空くのをライバルたちは待っているのである。 そういう事情の中、今回は、カールソンが勇敢に名乗り出てきたが、海外リングや統一戦などのビッグマッチを心待ちにしていた山中からすれば、V13戦の前の、この試合こそ“エアポケット”のように心・技・体を充実させるのが難しい試合だったのかもしれない。 次は、いよいよ36年間、誰も破ることができなかった最多防衛記録に並ぶ歴史的なリングである。 東京五輪への挑戦を表明している五輪3度金メダルの女子レスラーは「ぜひ若い人の目標になるためにも具志堅さんの記録を越えて欲しい。私のV16は、越えて欲しくはないが(笑)」と熱いエールを送った。 だが、そのV13戦には大きな試練が立ち塞がる。 山中が強すぎるゆえ、マッチメークが難航する中、次期対戦相手として有力なのが、メキシコの次世代ホープといわれるルイス・ネリーなのだ。実は、今回もオファーをかけたが、「指名挑戦まで待ちたい」と対戦を引き伸ばされた。近くランキング1位になると見られているKO率の高い若きサウスポーの強打者。“神の左”を当てる前に、カールソン戦のようなディフェンスの隙を見せると、危険極まわりない挑戦者である。 それでも山中は、「何度も言うけれど記録は意識していない。みなさんが期待して楽しんでもらえれば。結果はついてくる」と、持論を曲げない。 振り返れば、V1戦から「一戦一戦、勝負」と、最強挑戦者を求め、2階級王者、統一王者のビッグ・ダルチニアン戦を実現して初防衛に成功したチャンピオンである。試練を乗り越えてV13を達成することが、先人、具志堅氏への最大のリスペクトであり、山中らしい歴史の1ページになるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)